碧落の砂時計 2008年12月

碧落の砂時計

オリジナル恋愛小説の作品紹介+更新情報+お話置き場。

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 ――また……? 罪?
 香具弥は不思議そうな顔で、「すみません!ご無礼をっ」と慌てて彼女から手を放す恒峨を見た。

「同じ罪って、どういうこと? 昔何があったの?」
 その古の姫と変わらない、真っ直ぐな瞳に恒峨は息を飲む。――目を合わせてはいけない、と遠い記憶が彼に警告を与える。
「聞かないで、ください……」
 目を逸らした青年の銀の髪が揺れて、落ちた。
「……」
 不意に香具弥は彼の頭皮を引っ張らない程度にその銀の髪を持ち上げ、恒峨の顔を露わにした。隠された真実が見えるような気がしたからだ。
「ひ、姫!?」
 恒峨が驚いて思わず顔を上げると、真っ直ぐな少女の眼差がそこにあった。

 ――しまった――!
 そう思ったが、もう遅い。代々の月の臣下と同じく、少女のまっさらな心が生み出す魔力のような「何か」を彼は本気で感じているのだった。
「言いたく、無いの……?」
 香具弥は彼の顔を覗き込んだ。
「すみません……」
 恒峨が泣きそうな顔をしていたので、香具弥はそれ以上何も言えなくなってしまった。

 聞く事が無くなってしまった香具弥は、そのまま恒峨の細くて綺麗な銀髪をいじり始める。
「やめてください――、姫」
 青年は少し慌てたように、顔を赤らめるとその手から髪をすり抜く。そして決意したように香具弥の方を見ると唐突に尋ねてきた。

「姫には、好いた方が居ますか?」

「はあ??」
 突然の質問に、香具弥は間抜けな声を上げた。
 ――第一そんな人が居れば、四人に告白された時に上手い断り方が出来たはずだ。そう思った彼女は首を傾げて答える。
「よく、わかんないけど、居ない……かな?」
 恒峨はその言葉に、安堵のため息をついた。

「ならばあと二度月が満ちるまで、誰とも恋をしない事です」
「さっきもそんな事言ってたけど、やっぱ誰かと恋人になっちゃうと、汚れたとか言って月に行けなくなっちゃうの?」
 半分冗談で言った事だが、恒峨は強い眼差しで香具弥を睨んだ。聞いただけじゃん、と香具弥は首を竦める。
「そうならないように姫の保護者であるあの野蛮人に、求婚者達から姫を守るように申しつけたのに、一体何を……」
 その時、ぶつぶつ言う恒峨の後ろにぬっ、と人影が立った。

「……誰もテメエに命令された覚えはねえがな」
 出たな、無礼者め、と声だけで相手が分かった恒峨は、背後に現れた竹流をゆっくりと振り返る。

 それを全く無視すると、寄り合いが終わり一度家に戻った竹流は、香具弥にまた拳骨をお見舞いしながら、夜遅く出て行ったことに小言を喰らわせていた。彼女はそれにまた頭を押さえながら、彼に言った。
「ねえ、私は恋しちゃいけないんだって」
「は? なんで、んなコトまで命令されなきゃいけねえんだよ、くだらねえ」
 誰が言ったかなど、竹流にも容易に想像がついた。彼はぎろりと恒峨を睨み、恒峨もお前に何が分かると負けじと睨み返す。

 ――こんな暗がりでニ人で何してやがった。
 ――姫を保護するどころか、束縛しているのではないか。

 その二人の青年の睨み合いは、四人の少年達とはまた違う、寧ろそれよりも冷たく激しい炎のぶつかり合いのように、香具弥は感じた。
 ――何だかなあ、ニ人とも……。
 何故二人の仲が悪いのか分かっていない香具弥は、犬猿の仲である二人に呆れる気持ちすら感じていたが、竹流は彼女を「帰るぞ」と促した。去り際に、やっぱりコイツ、気に入らねえ……と再び恒峨と視線をぶつからせて。


 ――聞かなくても、
 ――言わなくても、

 分かるような気がした。

 「五人目」は――、


 香具弥はそこでふと思う。

 ――あれ? そう言えば五人目の求婚者って、まだ現れてないけど、一体、だれ……?


 ――「お前」だ……!


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「もしかしたらの神様。」の、本当にちょっとした初詣ネタの小話(えっちくもないです、ごめんなさいー)をアンケートのお礼SS第2弾としてUPいたしました。
そしてアンケートのほうも、第2回として内容を少々入れ替えました。お手数ですが番外編が読みたい!という方は、アンケート送信画面→お礼SS目次からお読みくださいませ。(実は無回答でも送信できる仕様です。もちろん、第1回アンケートにお答えくださった方にも、答えていただければすっっごく嬉しいですがご面倒でしたら回答はスルーで、SSにいっていただいても構いません…気が向かれましたら1項目くらいはぽちりしてやってください>_<

アンケートフォームへはお手数ですが、サイトのTOPページよりお越しください。第2回は質問内容上、集計はしない予定です。ご要望をいただいた場合は、また随時ブログでお答えします!

>12/28のアンケートより「もしかしたら~」の番外編追加のご要望をくださった方、よろしければ今回の短編を読んでいただけましたら幸いです!v


第1回アンケートでは全部で292件(若干の重複含む)という多くのご回答を賜り、ご協力誠にありがとうございました!

さて今日までのところ引越し準備をしつつ、夜はR18オフィスラブの続きなどをちまちまと書いていましたが、次回分を書いていて久々に照れました(汗汗)
今更!?って感じですが;1年以上前に書いたもう封印したい18禁話、あれ書いた時も途中何度も照れたなー。最近では慣れてそういうことなくなっていたけど。
照れるとどうなるって、とりあえず筆(PCのキーボードを叩く手)が止まって固まります…。
それから、うわわあああああ!///ってなって、続きが書けなくなって、家の中歩き回ってお茶飲んで冷静になれるまで頭を冷やして、しばらく時間を置いてまた書き始めます(←挙動不審)。
いやだからって、すごいえろいものを書いているわけでもないんですがね;なんというか、何書いてんだよ自分ー!みたいな自己嫌悪に陥るというか…。意味不明ですみません。でも書きたいんだよ、このへんたいさんはっ。

それはさておき、また今後の予告ですが、R15はネムリヒメ。続編を連載しているうちは、残念ながら他の長編には手をつけられない状況です。ですので請求制になっている裏18禁ページ、あそこにえちい小話(今までの連載の番外編)をちょこちょこ更新していこうかなあと考えています。
ありがたいことに、「もしかしたら~」 「刺身のつまにも~」 「カマクラ」のいずれもに続編リクをいただいておりますので、できれば全部書きたいですv
特に最初の2つは密かにまだ18禁シーン自体は書いていないので、書いてみたいというのもあり。(「月姫異聞」も18禁リクいただいていますが、こちらはブログ連載完結後に書きたいと思っています。)あと、「幻影金魚」も実は18禁シーンは書いていないなあ…18禁みたいなものだけど、具体的には書いていないような?いやあれで十分なのか??

リクが嬉しくて&少しでもお礼になればと、続編ばかり書いていますが、R15新作長編構想も、あります。
前少し呟いたけど、シリアスもので女子中学生と男子高校生のちょっと不思議でキケンなお話…うわわ;「幻影金魚」にちょっと似ているかもしれないけど、また違う視点になるといいなあと。これが珍しく秋~冬を舞台にしようと思っています。曲のイメージはGReeeeNちっくな感じで(←なんか今聴きまくってる)。
ただし前に言っていた諸々の事情で発表はいつになるやら…早く書きたいなあー。

幻創さんの18禁は更新頻度がぼちぼちでも、常に連載を書いていきたいです。ちなみに椿関連の番外編はそちらに後日UPします。

いつもアンケートご回答や各種拍手、ランキングぽちりもありがとうございます!
今年の更新はこれで最後ですが、本年は多くの方にお話を読んでいただけて本当に幸せな1年でした♪ありがとうございました!よろしければまた来年も当サイトに遊びに来てやってくださいませv皆様、よいお年を~。

では以下は、web拍手へのお返事です↓

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 ――月が私を追いかけてくる?
 日毎夜毎大きくなりゆく月に怯える少女は、月の淡い光の中を所在無く走る。家の店は閉店時間を過ぎており、竹流も寄合で居ない、静かな夜だった。

 香具弥が先ほどの公園に戻ると誰もいないように見えたが、
「姫!? いでっ!」
彼女の訪問に向こうから気付いたのか、驚く声とがんっという鈍い音が、息をつく彼女の真横にある土管から聞こえた。
「恒峨……さん……?」
 家に泊めてやってから何処に滞在しているのかと思いきや、彼はどうやらこの公園で暮らしていたようだった。
「ややっ、姫様がかような夜更けにお一人で外出されるなど、あの無礼な青年は一体何をしているのですかっ!」
「だからタケちゃんは関係無いって」
 それよりも土管生活に突っ込みを入れさせて欲しかった、と香具弥は思わずため息をつく。

 しかし前回ほど恒峨は慌てたり恥ずかしがったりしている様子はない。香具弥はふと疑問に思い尋ねる。
「ご飯はどうしてるの?」
「よくぞ聞いてくださいました! 心ある月王様のご厚意により、なんと毎食、月定食をお届けしていただけることになったのです!」
「……」
「これがまた栄養豊富でして。その他の軽量な物資や現金も月の光を通って――ああ、昼間でも月は出てますから、支給されています」
 お陰で毎日銭湯にも通えます!と嬉しそうに自慢する恒峨。夕方出会った時に電卓を叩いていたのは、出張経費を計算していたのだろうと察せられる。

 住む場所が土管なのはいいのかな……と香具弥はまた突っ込みを入れたくなったが、恒峨にとっては十分生活水準が向上したらしいので(布団もあるようだ)、彼がよいならば何も言うことはない。
「恒峨さんも、大変なんだね……」
 そうしみじみと言うと、香具弥は積まれた土管の上によじ登って腰掛けた。長い銀髪の青年はそれを不思議そうに見上げる。
「――それが、仕事ですが」
「うん……」
 香具弥は短く返事をすると、上空の月を見上げた。

「あと何日? 月行きの汽車とやらまでは」
「え? 中秋の名月の日ですから、あとひと月半ほどですが……」
 もうすぐ七月の下旬を迎える。月の形からすると、どうやら次の次の満月――になるようである。
「それには、絶対乗らなきゃいけないの?」
「姫!? 何を……っ」
 馬鹿にしているわけではないが、出張先の部下にホテルも用意出来ない月である。香具弥にはそんな強制力があるとも思えなかった。

「それにさあ、私が罪作って地上に来たって最初に言ったじゃない? もしも私が、求婚者だかなんだか知らないけれど、地上の誰かと恋しちゃったら、どうなるの?」
「姫っ! お気は確かですか!? そのようなふしだらな事をおっしゃるとは……あああ、嘆かわしい。これも全てあの粗暴で野蛮な青年の所為か!」
 美しい顔を顰めて、月の青年は嘆き出す。ふしだらって何もそこまで妄想しなくても、と香具弥は思うが、ふと呟いた。

「じゃあ、もしそんな事になったら、また罪になっちゃって私、月には行っちゃけなくなるんだ。ふうん……」
「まさか――!? 月姫、それはなりません!」
 深く考えず思いつきで言ったことだが、恒峨は土管に足を掛けると厳しい顔で香具弥の腕を掴むと叫んだ。

「また、同じ罪を繰り返すお気ですか!?」

 ――また……?

 紺碧の夜空に銀の星を散らしたような恒峨の瞳を見て、香具弥は首を傾げた。


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思わずトラバ。はい、します。というわけで、先述しましたが12/31から3~4日家をあけるので年始の更新や返信等が遅れることがあるかもしれませんがが、その時はご了承くださいませ(PCは持っていくし、携帯からも対応する予定ですが←寧ろその期間くらいやめとけという;)。
前言ってた引越しは1月の頭にすることになりましたので、年末は引越しの準備です。でも半年したらまた引越しなんですが。
1月の引越し後は今の半分以下の時間しかPCの前に座れないのですが、3月の更新できない分、まだまだ書き溜められていません;幻創さんの原稿は、R指定のないものですが椿の番外編(中学生編)を約1か月分書き溜めました!(まだ下書き段階ですが)
R15は書き溜められるかなあ~。なんとか時間を作ってがんばりたい!

「ネムリヒメ。」続編UPしました。またまた新たな恋愛イベント(?)が…。げんさん、潔白ですから嫌いにならないでやってください…。なんでこんな展開になったかというのは、この章が終わったらネタばらししますね。
次回更新予告ですが、12/30に短編で「もしかしたらの神様。」番外編第2弾をUPします!季節ネタ、初詣甘らぶです…ってそんなんばっか;すみませんがアンケートを書き換えさせていただき、そこのお礼SS第2弾にする予定です(1回目に回答くださった方は、回答はスルーされてもかまいません)。

記事やお話に拍手くださる皆様、誠にありがとうございます!アンケートへのメッセージもありがたく受け取っております。これからも頑張ります!
以下は拍手お返事です↓

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 自分を迎えに来ただのとのたまい、更には一気に求婚者を詰めかけさせた(と香具弥は思っている)月の使者・恒峨に、少女は抗議にかかる。
「月の呪いで、なんだか私の周りの人たちが喧嘩しちゃって大変なんですけど……」
「求婚者達が争っているということですよね……。でもそれならば」
 銀髪の美青年はいたって真面目な顔をして答える。

「私たちの意図するところではなく、月姫が月に帰る日が近づくにつれ、月が満ちていくかの如く、美しさを増しているからではないでしょうか……」
 そう、まるで月と地球との引力の如く惹かれていく――。

「はあ? 棒読みで言わないでよ」
 相変わらず歯の浮くような台詞に、香具弥はどうも馴染めない。
 それに陶酔しているのは恒峨一人であるし、おかしくなってしまったのもあの四人の少年だけではないか。学校の友人も竹流もそれ以外の知り合いも、香具弥が最近特別綺麗になったなどとは思ってはいないようである。
「私とかタケちゃんが月に興味ないから、火衣たちを操って嫌がらせしてるんじゃないかとか思ったんだけど……」
 心当たりがあるのか、ぎくりと肩を揺らす恒峨。

「そ、それよりも、姫がそのようにお困りだということは、あの無礼な青年はやはり――」
「タケちゃんのこと? そういえば言ってたよね。タケちゃんを試すために、この求婚計画とか……」
 穏和な香具弥の目も、段々と冷たくなっていく。「姫」に睨まれ、恒峨の体は一回り小さくなったように見える。
「とにかく、人を試すような事はやめて欲しいな。私だけじゃなくて、火衣たちも困ってるだろうし、私の問題でタケちゃんにも迷惑かけたくないし」
 香具弥がそう言うと、恒峨が視線を落とし明らかに肩をがっくりと下げたので、彼女は言い過ぎたかと思ってしまった。
 しかし本当にもし月が原因ならば、この主張も本音であった。――このままでは四人はいがみ合ったまま、事態はどうにも好転しなさそうであるし、保護者代わりの青年にも心配をかけるから。
 「ごめんなさい」とさすがに恒峨に一言付け加え一礼し、香具弥は夕食の支度をするため家へと帰っていった。

 天野屋の古びた横開きのドアを開けると、竹流が煙草をふかしながらレジに座っていた。
「おう、おけえり。今日もあいつらの襲撃に遭ってきたかー?」
 彼はあえて明るい口調で、四人に言い寄られて困っている少女を心配してやる。
「うん、まあね……」
 香具弥は暗い声で答えた。

 ――これからも四人はあんな風に喧嘩をしたり、それぞれに自分の元へと来たりするのだろうか……。
 少女はこの先のことを思うと、不安で暗い表情になってしまう。竹流は、彼の横の椅子に力なく座った香具弥を見た。そして煙草を口から外すと、今度は温かい声でこう言った。
「まあ、どいつも選べなくて、調停してえがどうにもならねえっつうなら、あんなガキ共俺がいくらでも、のしてきてやるからさ」
 その台詞は安心できるのか、そら恐ろしいのかよく分からないが――香具弥を拾う前の竹流はそれはそれは、酷い悪だったという噂が町内には有り――、しかしその笑顔を見て、香具弥もようやく少し笑えたのであった。

 その夜は、今度こそ本当に商店街の寄合で竹流は出かけた。
 香具弥は部屋の窓から高い位置にある月を眺め、本当に自分はあそこの者なのかと未だ訝しく思う。
 綺麗だとは思うが、懐かしいとまでは――。そこで彼女は、ふと思いついた。

 ――もしも自分が……想像はつかないが、誰か求婚者を選んだら、どうなるのだろう。
 それでも月に還れと言われるのだろうか? そして月へと導かれる、タイムリミットはいつなのか。本当に連れて行かれてしまうのか。

 細い月を見ていたら徐々に不安になってきた香具弥は、あの月の使者に話を聞いてこようと、夜にも関わらず思わず家を飛び出した。


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R18なんちゃってオフィスラブもの、UPされました~。幻創さんの編集部様が年末年始はお休みとのことなので、あちらの日記でもお知らせしましたが、R18の来週の更新はお休みさせていただきます。いよいよナニが始まったばかりのところですみませんが、どうか再来週までお待ちくださいませ!

その代わり、になるかわかりませんが、来週は「もしかしたらの神様。」の小話でもUPしようかなあと考えています。前言いましたように、続編のリクをいただいているのですが連載を始められるのが何ヵ月後かわからない状況なので、小話だけでもと思い書いてみましたが、相変わらず、び、微妙かも…。アンケートの内容も少し入れ替えて、アンケートのお礼小話第2弾としてUPしようかなあと考えていますが、どうしようかなあ。
とりあえず番外編小話自体はUPしますので、こちらもしばしお待ちくださいませ!本当はクリスマスに間に合わせたかったのですが、無理でした。なのでクリスマス&お正月ネタだったりします(笑)

ネムリヒメ。の方は変わらず週1回更新のつもりですが、年末年始は私も家に居られないので、こちらももしかしたらお休みをいただくことがあるかもしれません。その時は何卒ご了承くださいませ。

お話に拍手押してくださる方、アンケートに応援メッセージ添えてくださる方、誠にありがとうございます!以下はいただいたメッセと、アンケートで作品にご意見(ご要望)くださった方へのお返事になりますv↓
※ちなみに当サイトは携帯からメッセ等をいただいたり、閲覧していただくことが多いため、読みづらいかもしれませんが長文でも返信は反転にしていません。すみませんが、こちらもご了承ください…。

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 四人の男に言い寄られた、月姫・香具弥。突然のことに困ってしまったものの、だからと言って引き篭もってもいられない。なんとかなるさ!と彼女は今日も元気に学校へと出かける。

「……よお」
 その登校途中の道で、早速ばつの悪そうな顔をした火衣と出会った。
「おはよ……」
 香具弥は答えた。――妙な緊張の中、
「昨日は悪かった」
頭も下げずに早口に火衣は言い切った。しかしあまり彼に謝られたことのない香具弥は、驚いて火衣を見る。

 火衣は火衣で認めたくはないが、昨日の竹流の言葉の「急に言い寄っても逃げるだけ」にはそれなりに納得したらしい。そして言われたとおり個性を生かし、アピールすることにしたのか、このように潔く謝ったのであった。しかしこれが功を奏したか、
「別に火衣が悪い訳じゃないし……」
香具弥と元通り会話をすることに成功したのであった。
 それからニ人で苦笑し、他愛のない会話が再び始まった。こうして幼馴染である二人の、いつもどおりの登校風景が戻ってきた……はずだったが……。

「おはようございます!」
「天野先輩っ!……と阿部先輩」
「あ、おはようー」と呑気に答える香具弥に反し、哀れ火衣少年。龍と燕、双子の登場にいい雰囲気を粉々に砕かれた。
「てめえら……なんで……」
「だって夏の大会終わって」
「部活引退しましたから♪」
 だから朝練がなくこんな時間に登校出来るのだと言う。

「それにお前ら、家、逆方向じゃなかったか!?」
 訝しげに火衣は二人を睨みつける。そう、二人はわざわざ香具弥の家の方まで迎えに来たらしい。しかし火衣の突っ込みなど気にも留めず香具弥の荷物を持とうとする龍に、火衣が慌てて吠えかかれれば、片や燕が彼女の耳元で語りかける。
 ――なんで恋敵がニ人も……嗚呼、体がニつ欲しい、と火衣は一瞬真剣に思った後、はっと恐ろしい事を予測し、首をぶんぶん振ったが、
「暑苦しい。部活引退したのなら、その分受験に専念するんだな」
その不安は的中し、燕の体を香具弥からべりっと引き離したのは、やはり突然現れた御行であった。

「あ、会長。おはようございます」
 とりあえずちゃんと生徒会長に挨拶する香具弥。後輩としての礼儀は欠かさない。
「なんで、てめえまで……っ!」
「鍛錬のために、車での送迎を控えさせた」
 その言葉に、そういえば高校に何処か大きな会社の御曹司がいると聞いたが、会長だったのか……と香具弥は内心なるほどと思っていた。ちなみに御行は剣道部の主将も努めている。

 それにしても朝っぱらから四人の求婚者が集まり、騒々しくて仕方が無い。
 ときめくよりも呆れてきた香具弥は、やっと着いた高校の正門で四人に、放課後は一人で帰りたいと懇願した。
 とは言っても不安は尽きず、放課後、彼女はこっそり裏門から出ると、いつもと違う道で帰ることにしたのであった。

 さすがに今度こそ誰にも会わずにすみそうだ。ついでにスーパーで夕飯の買い物をした後、UFOのような形をした遊具がある公園を通りかかると――、
「ああっ!!」
忘れもしない、銀髪美形の青年、事の発端である月の使者・恒峨が、ベンチに座って電卓を叩いているではないか。

 香具弥の存在に彼が気づいた瞬間、
「あなた、ねえ!」
彼女は思わず恒峨に抗議するため詰め寄った。恒峨は突然現れた香具弥に驚いたようだったが、
「求婚者たちが姫に無礼でも働きましたか?」
ときょとんとした表情で言うので、
「あなたたちのせいでしょーーっ!??」
遂に彼女はキレて叫んでしまった。そしてぜはぜはと息を整えると、話を続けた。

 
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ネムリヒメ。続編UPしましたー。赤ちゃんの話の方は「カマクラ」の裏ページで少し書いた小ネタとかぶってますね。

PC前に座れる時間は激減しましたが、どうにか細々と書いてます!
でも年末年始の更新はお休みさせていただくかもですが…。

各作品やブログ記事に拍手ありがとうございますv密かに元気の素になってます。


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 四人の求婚者に囲まれ、困惑している香具弥に竹流の拳がお見舞いされた。
「痛い~」
「俺、今日これから商店街の寄合だから、店番してくれ」
 彼の言葉に、寄合?聞いてないぞ……と香具弥は思ったが、此処から連れ出してくれるのなら、もはやどんな理由でも構わない。彼女は素直に頷いた。

 四人の少年に、ではまた、と頭を下げ、あっさりと駆け去ってゆく香具弥を呆然と見送りかけた少年たちは、
「ちょっ……」
と彼女を呼び止めようとしたが、丁度香具弥への視界を遮るように、竹流がその間に立った。そして彼は四人の方を見もしないで、煙草を出すといつもの様に吸い始める。
「兄ちゃん達も難儀だな」
 自分の身内が誰にも返事しない事の謝罪か、それとも月の呪いに翻弄されている事に対してか。竹流は誰に言うともなく呟くと、煙草を咥えたままその場を去ろうとした。

「――おい、オッサン」
 しかし火衣の呼び止めに、ぴくりと反応すると足を止める。

 そして「あのおじさんは」「天野先輩の保護者の方です」と御行に説明する龍と燕の声を背中に、火衣をゆっくりと振り向いた。
「なんだよ、火衣坊」
 火衣は昔っから香具弥に近づこうとする度、からかったり邪魔したりとする、この男が気に入らなかった。
「……過保護で結構な事だな」
「八つ当たりか?」
 竹流はいつものようにからかいの笑みを向ける。
「あぁ? あんたみたいに卑怯くせえよりマシだろ」
「卑怯?」
 しかし火衣の言葉に、その眼鏡の上の眉を顰めた。

「ああ」
「よく分からんが……四人がかりでいきなり詰めよったら、女の子はフツー逃げるぞ」
 三十路男の正論に絶句する、少年四名。
「それより一人一人の個性をだな、時間を掛けてアピールし……」
「さっすがこの界隈で遊び人の異名をとっただけの事はあるな!」
 素直に頷く龍と燕、そして何かを考え込む御行に対して、あくまで憎まれ口を叩く火衣の左頬を竹流は軽く摘んだ。
「中学生(※龍&燕)よりも背え低いからって……」
「カンケーねえだろっ!」
 その手をばっと払う火衣に、ふと一同同情。嫌味ったらしい竹流に思わず火衣も軽く手が出てしまうが、それは難なく避けられている。

 そして小さくなった煙草を下に落とし、さあ寄合、寄合……とわざとらしく出かける竹流の後ろ姿に火衣は大声で叫ぶ。
「それもどうーっせ、嘘だろ!」
 口に手を当てずっと考えていた御行が、それを聞きぽつりと言った。
「厄介な、敵だな……」
 思わず、龍と燕も真面目な顔で頷いた。


 その頃香具弥は、天野屋で竹流に言われたとおり店番をしていた。
 ――恐ろしく長い一日だった……。一日で四人の人間に告白されるなど、通常有り得ない。しかもどの少年にも、恋愛感情を抱いていないのだ。彼女は、疲れたようなため息を深くつく。
 しかしそこで、慌ててがばっと顔を上げた。
 ――待てよ? 恒峨の言葉では、求婚者は五人。火衣、龍、燕、御行は何度数えても四人……と言うことは……、
「まだ一人、いるの……??」
悲痛な声を上げて香具弥はがっくりとうなだれた。

 そして今にも五人目の求婚者が店の入り口から入ってくるような気がし、それが恐ろしく――竹流に怒られるかも知れないが、今日は開店休業だ、と少女は店のシャッターを慌てて閉めたのであった。
 
 
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微妙な連載3本、それぞれに楽しんで書いております…。今はネムリヒメの続きを下書きしています!
続編となるとどうしても本編のようなドラマチックなくっついたり離れたりが書けずに申し訳ないのですが(続編でも書ける方は書けるのでしょうが、タイトルどおり、私自身がほのぼのまったりした内容のものが好きなので…;)、それでもよろしければ大人なのにらぶらぶで純情な2人にほっこりしてやってくださいませ~。

さて投稿サイトさんを撤収するほど時間がないと言いながらも、また新しいことに手を出しています(おい)
今はミラーサイトってやつをちまちまと作っています…。投稿サイトさんでは新作を出し続けていきたいので、これ以上登録することはしばらくないのですが、旧作しかも長編は折角時間をかけて書いたのでやっぱり多くの方に読んでもらえたらなあという気持ちが大きいです。それとバックアップがとりたいのもあって…。
なので長編のみのPC向けミラーサイトを作成中です。あ、そこでは新作は発表しませんので(あくまで新作発信は携帯からも見れる、今のサイトとこのブログになります!旧作長編をコピーして置いておくための場所です)、いつかどこかのランキングサイトに登録できる運びになりましたら、そういうことかと思ってやってください…。

でも小説更新の妨げにはならないようにしたいので、完成はいつになることやら;
もちろんブログで好き小説を紹介したい!の夢は捨ててませんし(素敵感想ブログ様をいくつも見つけて触発はされてるんですが…)、頂戴している各旧作の続編リクも絶対に書きますよ~。ええ!ただしいつになるかが分からなくて申し訳ないのですが;

もうすぐクリスマスですね。季節感のないお話ばかりを今連載していますが、クリスマス小話でも書こうかなあとかも考えたり。やりたいこと多すぎ!もし書くとすれば「もしかしたらの神様。」あたりで書きたいですv
というのも、先日頂戴したアンケートご要望のお返事にもなりますが、

◆「もしかしたらの神様。」の番外編が読みたい

…とのご要望を頂戴しました。ありがとうございます!連載はどれも思い入れがあるので、リクしていただけるほど気に入っていただけるのは本当に嬉しく光栄に思います。
他の方からも同様のご要望を複数頂戴していますので、長編で続編を連載したいと考えています♪…ですがオフラインの事情で、連載開始できるのが何ヶ月も先になってしまうので(申し訳ありません!)、アンケートのおまけのようなショート番外編を近いうちにUPしたいと思います。
本当にお待たせしてすみません&リクありがとうございました!

長くなってすみませんが、追記以下はweb拍手&ブログ拍手のお返事になります↓
拍手ぽちだけの方もありがとうございます!

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 月に還らなければならない、と月からの使者に呼び寄せられる女子高校生、香具弥……その彼女に五人の求婚者が迫る。

 修羅場の戦いを始めた、火衣、龍、燕から自分を助けてくれた同じ高校の先輩を、香具弥はまじまじと見上げた。「生徒会活動」の言葉に彼女も言われてみれば、講堂のステージ上でその顔を見た事があるような気がした。
「生徒会長……さん?」
「石田、だ」
 御行は苛立たしそうに頷きながら告げた。香具弥は確かに生徒会活動には関心は薄く、それは否めない事だが、それより不可思議な事は……。
「あ、お顔知らなくてごめんなさい。――でも、どうして私なんか知ってるんですか?」
 この春に入学したばかりであるのに……。そう思った香具弥は真っ直ぐに御行を見上げた。逆に御行は香具弥から目を逸らす。
「……俺も質問してたんだが」

『どいつとつきあってるんだ』

 その質問を思い出した香具弥は口を噤み、下を向いた。とりあえず、
「誰ともつきあってませんよ……」
と正直に答え、だから、と顔を上げた。
「だからどうして、答えなくてはいけないんですか?」
 御行は無言で香具弥を見下ろした。全ての想いを込めた強い眼差に見竦められ、香具弥はぐっと言葉に詰まったが、なんとかこの嫌な予感が当たらないでほしいと思いを巡らせていた。が、
「言えるわけ、ないだろ……」
言いにくそうに言葉を紡いだのは、御行が先だった。
「ロクに話したことも、無いのに」
 自嘲のような響き。

「天野は変わっているが、存外、人気あるな」
 今度は失礼な言葉に香具弥は唇を尖らせるが、
「『面白い』と思った……俺も同じ穴の何とやら、だな」
そう呟き今度は自分を切なげな表情で見つめる御行に、彼女は何も言葉を返す事は出来なかった。
 ただ「最悪の予感」――この少年もまた求婚者のひとりではないか、ということが当たりつつある事に、少女は足元が崩れそうな思いだった。そして御行が不意に自分に顔を近づけたので、香具弥は焦る。

「せめて存在は、覚えてくれ」

 ――嗚呼何で……、何の因果か……。香具弥がくらくらと夏の暑さに目眩を覚えていると、
「香具弥!」
火衣の声に更に恐ろしい現実に引き戻される。そこには何故か服が乱れて疲れた様子の、火衣と磯貝家の双子がいた。
「誰だ、てめえ……」
「阿部先輩、紳士的に」と囁く双子のお陰で火衣は御行に殴り掛かる事はなかったが、一触即発の勢いで御行の前に立つと、背の高い彼を睨み上げた。
「もう、いいだろう」
 状況を察した御行は、呆然とする香具弥を庇うように手を出した。その態度が火衣を益々苛立たせる。――昔から香具弥のことは、自分が一番見ていたのに……、と。勿論、龍や燕だって内心は決して穏やかな気持ちではない。

 一人の少女を巡り、見事な四竦み状態。
 しかしこの場で誰よりも逃げ出したく己の運命を恨みたく、困っているのは、他ならぬ香具弥であった。
 ――どうやってこの場から逃げ出せばよいか。否、逃げても争いは収まらない。一体どうすれば……。
 その時、混乱する香具弥の頭上に新たな、しかし聞き慣れた何よりも安心する低い声が拳と共に降ってきた。

「何時まで油売ってんだ」
 香具弥が軽く叩かれた頭を押さえて振り向くと、そこには見慣れた眼鏡の三十路男――竹流が立っていた。


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R18オフィスラブ、本日今週分があがりましたのでUPまでしばしお待ちくださいませー。(追記:12/17UPされました)書き溜めるのもやりたいので、ネムリヒメUPは日曜日、もしくは月曜日になるかも?ですが、こちらもしばしお待ちくださいませ…。

タイトルにもありますが、いよいよ創作にあてる作業時間が減ってきましたので、非常に残念ではありますが、いくつかの投稿サイトさんを退会することにしました(※全てではありません)。
そもそも自分は前も言いましたように、こんなレベルと内容でも許してくださる、心の広くてモエポインツが同じ方はどこかにいないかなあという気持ちでネット小説を書き始め、投稿サイトさんやランキングサイトさんのお力を借りている他力本願の小物であります(ほんとすみません)。
というわけで投稿サイトさんも、どこが自分に合っているかなというのも含めていくつか登録させていただいていましたが、さすがに管理をする時間がなくなってしまいまして、2つほど撤収を決めました。途中、賞レースなども参加させていただき、大変よい経験となりました。

そちらのサイトでお世話になった方や、自分などを知ってくださった方が、どれだけ今でもこのブログや別サイトのお話まで読んでくださっているかはわかりませんが、少しの読者様でも出会うこと、作品を読んでいただくことができて、誠に感謝しております。いただいたご感想などもどれも涙して受け取りましたので、コピーして保存したいと思います!今までありがとうございました!!!

ちなみに使いやすさや自分の書く目的に合っているかなということと、アンケート結果から「小説家になろう」様と「幻創文庫」様への投稿は、細々とでもこれからも続けていこうと思っています。あと自ブログや裏サイトへの小話掲載も少しでも時間を作ってやっていきたいです。
それでもやはり色々な投稿サイト様で投稿させていただいたのは大変面白かったので、またいつか時間ができることがあれば手を広げたいな、と思っています。HNは今のところ変えるつもりはありませんので、またネットのどこかでお見かけしましたら生暖かく見守ってやってください。
これから半年~1年くらいはオフラインのことに集中しなきゃです…(涙)

と言っても書くことをやめるわけではありませんので!(それだけはできない!)
というか今の連載ペースだけはどうにかこうにか守りたいなあと思っています。

あと特記しないと言いましたが、無謀参戦だったアルファポリスさんでの青春小説大賞、結果が発表されましたですねー。ほんと、不甲斐ない作者ですみませんでしたが、応援ありがとうございました!
ちなみに2月の恋愛大賞にも、また無謀にも参戦予定です(苦笑)今度は「幻影金魚」で参加させていただこうかなと思っています。「ネムリヒメ。」と悩んだのですが、どちらも完結しているのでこちらはまた別の機会に挑戦させていただこうと思っています。ってどれも微えろばっかですが…はは。
この賞参加システムはぽちりとエントリーボタンを押すだけなので、折角の機会ですから色々な方に読んでいただこうかなあと思ってます。恥の上塗りですみませんが、これからも精進いたします!

長くなりましたが、以下の追記は拍手お返事です↓
拍手押していただけるだけで励みになってます、ありがとうございますv

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 幼なじみの少年や後輩からの、突然の告白。月からの試練なのか、一気に「求婚者」が香具弥に詰め寄る。

 現れた火衣は怒りを含んだ声で、低く呟いた。
「磯貝 龍に燕……。元気そうじゃねえか……」
「はい。阿部先輩におかれましても」
「ご健勝のほど、お慶び申し上げます」
 今朝香具弥に告白した少年と、たった今告白した少年たちは、他愛ない挨拶を交わしながらだが、空気中の塵を燃やすほどの火花を視線の間で散らしている。
 火衣がどこから話を聞いていたのかは不明だが、磯貝家の双子が香具弥を慕っていたのは同じ中学でも有名な話であったし、龍と燕も香具弥と昔なじみのつきあいをしている火衣の存在はよく知っていた。

「……別に選ぶのは香具弥なんだけどさ」
 やはり双子の告白を聞いていたのだろう。火衣が独り言のように言った言葉に、誰も選ぶ気のない香具弥はぎくりとする。
「それは」
「そうなんですけど」
 龍と燕は、冷や汗をかいてる香具弥の右と左から腕を回して彼女を絡めた。暑い……と思う香具弥を火衣は乱暴に引き離して叫ぶ。
「勝手にベタベタくっついてんじゃねえ!」
「あーあ、自分が出来ないからってー」
「ねー?」
「そういう問題じゃねえっ!」
 しかしすぐさま双子に切り替えされ、くわっと噛み付く火衣。

 いつ拳がとぶかというような熾烈な言い合いが始まり、なんだなんだと本屋帰りの人々は振り返る。公衆の往来で恥ずかしいと思った香具弥はとりあえず止めてはみたが、挑発されてしまった火衣も引きたくないと息巻き、龍と燕も笑いながらも交戦している。
 しかし「私の為に喧嘩をやめて」と言うのも何か寒い気がする香具弥は、月の呪いではないかと、この突然の告白の数々をいまいち信じていないこともあり、困ったように三人を眺め呆然とすることしかできなかった。

 ――すると突然、
「恥知らずにつきあう事は無い」
という声がしたと思った瞬間、香具弥は腕を掴まれた。

 一瞬、低い声に竹流かと思った香具弥だが、見上げたその男は見たことはあるが知らない人物で、彼女と同じ高校の制服を着ていた。
 しかしその言葉には少なくともこの場からは救われると思ったため、香具弥は彼にされるがままに腕を引かれその場から連れ出してもらってしまった。

「あ! 天野先輩が!」
 燕の声に、至近距離でにらみ合っていた龍と火衣は素早く振り向いた。香具弥と同じ高校の少年と思われる見知らぬ背の高い男にずるずると引きずられていく彼女は、今まさに本屋の敷地内から出ていくところであった。
 三人は「トンビに油揚げ」を渡さぬよう追いかけようとしたが、
「ボーヤたち……。此処は喧嘩道場じゃないのよ……」
本屋から出てきたエプロン姿にハタキを持ち、スキンヘッドで顔に傷まである大柄な店長に、行く手を阻まれ、その顔を青ざめさせた……。


 さて香具弥と言えば、少し歩いた後近くの公園に辿り着き、そこでようやく同じ学校の少年は彼女から手を離した。
「――で、どいつとつきあってんだ」
 しかしこの少年に「ありがとう」と言おうとしていたところ、唐突にそう尋ねられ、彼女は驚いて礼の言葉を飲み込んだ。
「あの、すみませんが、どちら様でしょうか?」
 その言葉に彼は相当ショックを受けたらしい。
「天野香具弥……。如何に生徒会活動に興味が無いかが、うかがえるな……」
 彼曰く、香具弥の通う高校の生徒会長であるという石田 御行(ミユキ)は、切れ長の目で彼女を睨んだ。


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ネムリヒメ。続編、無事UPしました~。お前はどこへ行こうとしているのか、という感じですが、こういう「大人ならでは」のお話は書いたことがないので(とゆっても一般的なそれとは違いそうですが;)、もちろん真剣に書いていますし、楽しいです。
前回の日記のサイクルどおり、次はR18オフィスラブ下書きです!

それにしても、夜は人のいる部屋で作業しなくてはいけないので、音が気になって現在いらいらしているところです…!1月の終わりごろ引っ越しますが、そうしたらもっと大人数のいる場所で作業しなきゃいけないので、集中してエロ話が書けるのかなーと心配です。
ああ、集中力がほしい…!

各作品、ランキングへのぽちり、いつもありがとうございますv
追記部分は拍手コメントのお返事です↓

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 突然現れた月の使者に姫だと言われ、その呪い(?)のおかげで五人の求婚者までもが現れると宣言された香具弥。
 月の使者の出現に加え、幼なじみの火衣少年に突然告白された彼女は、立て続けの出来事に脳が事態を処理できず、とりあえずふらふらと本屋へ出かけていったのであった。

 香具弥は本を読むのが好きだ。だから彼女のストレス解消法は、独りで本屋で立ち読みすることだった。しかし冷房が効いた涼しい本屋で好みの本を物色していたところ……、
「あー、天野先輩だ」
「お久しぶりです」
ニ人分の少年の声に、彼女が振り返ると香具弥より十センチほど背の高いところにニつの顔があった。

「あれ? 磯貝家の双子……久しぶりー。元気だった?」
 香具弥はニ人の愛想の好い中学生の肩をぽんぽんと叩いた。この双子とは昨年までの中学時代、委員会が一緒であったのだが、彼ら自身注目を集めている存在であったにも関わらず、何故か目立たない香具弥に懐いていたのであった。そして香具弥も、軽薄そうな見かけの割に真面目で責任感のある彼らを可愛いがっていた。

「元気でしたが……」
「なあ」
 そのの双子の少年、龍と燕は顔を見合わせた。
「天野先輩が居なくなって……」
「寂しかった」
 以前と変わらぬ口調で口々に言われ、可愛がっていた頃が蘇り、香具弥は龍と燕の頭を撫でてやろうとしようとしたが――その手を同時にぱしっと掴まれた。彼女は驚いて、いつの間にか自分よりかなり背が高くなってたニ人を見上げる。
「そうじゃなくて……」
「もう一度会えたら、言おうと思ってました」

「「俺たちとつきあいませんか?」」

 右耳と左耳、両方から囁かれ、香具弥は茫然自失。
 そして両側にある整った笑顔をニつ交互に見ると、彼女は「とりあえず外に出よう……」と脱力して彼らを促した。
 外は暑かったが本屋で痴情のもつれを起こすわけにもいかない。香具弥にとっては一応後輩なので、本屋の前の自動販売機で三人分の缶ジュースを買うと、俺たちに奢らせろと喚くニ人に渡した。

「で?」
「だから、俺たちニ人とつきあうか」
「龍か俺のどっちかとつきあうか……選択肢は三つです」
「なんでニ人ともと、って選択肢があるの!?」
「だって兄弟って、一生離れられないんだからさー」
「修羅場とかしたくないじゃないですか」
 一卵生双生児のニ人は、同じ顔でにっこりと笑った。

「どっちも選べないって言われて、ニ人とも玉砕するくらいなら」
「いっそニ人とも選んで貰った方がお得とゆーことで」

「あんたら……」
 香具弥は龍と燕、ニ人の頭を軽くぽこぽこと叩いた。
「私はそーゆーの嫌なの!」
「「知ってます」」
 間髪入れない矛盾した言葉に、香具弥は遂にその場に崩れた。
「だから好きになったんじゃん」
「なー?」
 こいつらにはもう何を言っても無駄に違いない、と香具弥は思った。そしてふるふると立ち上がり、どうにか声を絞り出す。

「四つめの選択肢……、龍と燕、どっちもとつきあわない」
「「えー」」
 二人からは納得いかないというブーイング。
「もしかして……」
「誰か好きな奴とか居るんですか?」

「居ない!」と即答しようとした香具弥だが、後ろに人の気配を感じて振り返ると、そこには硬直した火衣が立っていた……。


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「は、はに!?」
 「何?」と言おうとしたのだろう。あさぎは清矢郎らしからぬ行動と、今の甘い行為のギャップに眼を丸くして尋ね返す。
 本当に表情がよく変わり、可愛いな、と内心では思うのだが、これ以上こんな場所でこの行為にのめりこんではならないと、清矢郎はわざと己の願望と決別した。
 少女と対照的にぶすりとした顔をした少年は、手を離しながら彼女に言った。

「……これ以上すると、止まらなくなるから」

 あさぎはそう言って彼女から顔を逸らす清矢郎をぽかんと見ていたが、やがて唇を閉じたまま、もごもごと恥ずかしそうに動かすと彼のTシャツを掴んだ。
 少女の思っていることも、言いたいことももしかしたら今の自分と同じかもしれないと思った清矢郎は、勿体無いな、と正直なところは思いながらも彼自身に言い聞かせるように彼女を諭す。
「外だし、第一、あさぎが――」
 彼女が妹みたいなもので恋人同士といえども、「生理なんだし」と高校一年生の女子にあからさまに言うのは、付き合って一週間ではまだためらわれた。あさぎも清矢郎の気遣いが分かったようで、俯く。

 気まずい沈黙が流れ、煩い蝉の鳴き声を思い出したように二人は聞いていた。
 そしてあさぎは再び彼の大きな手に指をそっと触れると、呟いた。
「……せーしろーの、生真面目。かたぶつ」
 詰るような言い方に、清矢郎は無言だがやや口を曲げる。少女のことを想って泣く泣く我慢したつもりなのに、女心とは中々難しいもののようである。

 しかし頑固な彼は、自分が間違ったことをしているとも思えなかった。月経の最中の女性を外で無理矢理犯して、その身体に何かあったらいけないと、女性の身体のことは分からないので心配になってしまう。
 それに大切なあさぎだからこそ、彼女自身にも自分を大切にして欲しいと、兄貴分としては思うのだ。
「悪かったな」
 清矢郎はそう言うと、あさぎの頭をぐしゃぐしゃと撫ぜた。触れたいのに触れられない、精一杯の抵抗であった。そして彼女もまた欲求と現実の狭間で禁欲に身を焦がしているのだろうか。

 頭を撫でられたことに少し嬉しそうな顔をすると、少女は髪を整えながらもう一度彼を見上げた。既に歩き出している清矢郎の背中を、あさぎは幼い頃のように追い掛けて問う。
「次、いつ会える?」
「……いつでも」
 そう即答した清矢郎に、あさぎは追いつくと提案してきた。

「は、花火、あるじゃん。おばあちゃん家の近くで」
「――ああ、」
 幼い頃互いの家族と二人で行ったそれだと、清矢郎にも分かった。そしてあさぎの言おうとしていることも察した。

「いつだっけ」
 そう答えたのは、彼としても「一緒に行こう」の意思表示のつもりであった。

 そして次の、逢瀬の約束を交わす。
 幼い頃の思い出と、空白の時間を二人で辿り、必死で辛かった四年間を埋めようとしている。

 否、四年前の忘れられない幼い情熱を、大人に近づきつつある身体で体現しようとしているのかもしれなかった。
 十八と十六の、少年と少女が。


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コメント、各作品に拍手くださる皆様ありがとうございます!
ここ数日はオフラインの事情で何も書けない日が続いてますが、最近の大体の一週間のサイクルとしてはこんな感じです。(オフのお仕事の忙しさにより作業できない日もあるので、予備日も含め)

木~土 ネムリヒメ下書き

日頃 ネムリヒメUP

日~火 Lolli~下書き、掲載申請

火~水 お話を書きためる日(活動縮小に備え)

水頃 Lolli~UP

木~ ネムリヒメ下書き

…以下続く(これらの合間に、今はネムリヒメ本編の修正と月姫のUP等々をしています)

という感じです。書きためる作業もなんとか始められて一安心ですが、まだ二週間分しか書けてません;(しかも下書き段階…)
ちなみに今書きためているのはいずれも短~中編でR15新作と、R指定なし&R18の椿番外編ですが、新作ではなく「カマクラ」や「もしかしたらの神様。」の番外編を書くかもしれません。でも二つとも番外編はいつか必ず書きますが、できればきちんとプロット練って長編にしたいので、書き溜めることはむずかしかったりするかも…。
連載はじっくりまったり毎週振り返ったり悩んだりしながら書きたいので、あまり先まで書きためるのが苦手だったりします。個人的には短編のほうが書きためやすいかなあ。

では以下は拍手等のお返事になりますv↓

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 謎の月の使者をとりあえず家に泊まらせた香具弥だったが、目が覚めたら恒峨はそこに居なかった。鍵が開けられた形跡もなく、幻のように消えた彼はやはり本物の月の使者だったのだろうか、と改めて思う彼女であった。
 何処に行ったかは分からないが、これ以上哀れみを受けることは彼の沽券に関わると思われたし、特に異変も起こらなかったので香具弥は普通に学校へ行くことにした。

 高校への道を普段と変わらずのろのろと歩いていると、突然後ろから鞄で頭を軽く叩かれた。痛いなあと香具弥が背後を振り向くと、そこには違う高校の少年が立っていた。
「相変わらずぼーっとしてんな、香具弥は」
「うるさいよ、火衣(カイ)……朝練は?」
「テスト前だから、休み」
「あっそ」
 この阿部火衣という少年は、住んでいる町内は違うものの小学校からの知り合いで、いわゆる幼なじみというやつである。高校が別々になってからはあまり会う機会もないが、こうして会えば昔のように軽口を叩き合う仲だった。

 同じ方向に高校があるため、ニ人は自然と一緒に学校へと向かう形となる。そしていつものように口喧嘩を交えて他愛無い話をしていたが、
「――っつうわけでさあ」
「うん」
「つきあってよ」

「……は?」
 どういうわけでそういう会話の流れになるのだろうか。香具弥はぽかんと口を開けて火衣に聞き返す。
 ――確か前の会話は胡瓜の和辛子づけについてだったはずだったのに……。

「何処に……?」
 とりあえずお約束の一言。

「永遠に」
「もうつきあってるじゃん」
「じゃあ墓場までつきあえる?」
「……」
「ホテルとか結婚式場とかでもいいけど」
 その言葉に香具弥は火衣から思わず一歩後ずさる。
「場所で言えばそういうこった。解るな?」
 彼は口をへの字に曲げると念を押すように、香具弥を見た。彼女は本当かよ、と言うように火衣をまじまじと見てきたので、逆に彼の方が目を逸らしてしまう。
「っ、か、考えておくよーに!」
 そのまま彼は後ろ手に指をさすと足音も荒く、先に歩いていってしまった。

「……」 

 晴天の霹靂に呆けてそのまま立ち尽くしていた香具弥であったが、三十分後、再びよろよろと歩き出した。


「っうかさあ、絶対おかしいよ!」
 その日一日ぼーっとしていた香具弥であったが、自宅の古い店に帰り、呑気な竹流の顔を見た途端に爆発した。
 店の木製カウンターに勢いよく手をついて、竹流に切々と訴える香具弥。彼は煙草を吸いながら売り物のエロ雑誌を見つつ、香具弥の話を聞いている(はずである)。
「だって急に、火衣がおかしくなって……脈絡がなさすぎる! 絶対に月の呪いだよっ」
 昨日の恒峨の予言――五人の求婚者が香具弥の前に現れる――。火衣の突然の不可解な言動は、この恒峨の呪いによるものだと香具弥は主張する。
 こんな混乱の中でも、彼女は既にてきぱきと美味しいコーヒーを淹れて竹流に手渡しており、それ飲むべく、竹流は煙草を消しながら尋ねた。

「お前はその火衣坊に、全く興味は無いわけ?」
 竹流も幼い頃からあの背の低い少年を知っており、香具弥のことを気にっていたことも知っている。きっと彼にとっては初恋で初めての告白であろうに、月の呪いと言われては火衣少年も浮かばれまい――と竹流は内心では男として少々同情していた。
「ないっ」
 しかし見事なまでにきっぱりと香具弥は答える。
「あ、そ。じゃあかぐや姫みたいに無理難題でも出したら」
 ――真剣に聞いてるのかな……と香具弥は竹流の飄々とした様子に訝しんだが、近所の茶飲み仲間の老人が客として現れたので、彼に邪魔だと追い払われてしまった。

 彼女はため息をつきながら、次はふらふらと本屋に出かけた。そこで次の受難が待ち構えているとも知らずに……。


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R18なんちゃってオフィスラブ、本日掲載申請に出しましたので、UPまでしばしお待ちください~。遂に官能シーン突入です。

さて「月姫異聞」の方は時間を見つけて、少しずつ再UPさせていただいてます。この作品はサイトを始めてすぐ、2003年の夏頃書いたものになります。古すぎて文章が恥ずかしくなってきたので(今も恥ずかしいけど)、一旦下げて全文修正、ということにした次第です。
古い作品は他にも何作かサイトから下げましたが、この作品については下げずに再UPしたのは、こういったテンポのよい(しかもHシーンのない;)ストーリーが今の年取った自分には思いつかないから、というのがあります。ちなみに「かぐや姫のお話が読みたい」ということで当時の読者様からリクを頂戴し、ファンタジー少女漫画をイメージして書いたお話です。
下げてしまったお話も、またいつか日の目を見せたいなあとは思っています。どのお話も愛着がありますので…。

お話の方の拍手やランキングの方、ぽちりと押してくださる皆様ありがとうございます!
アンケートでも応援やご感想のお言葉を添えてくださる皆様、涙して拝読しておりますよ~!

それでは以下は拍手メッセージへのレスとなりますv↓
 
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 竹流に拾われてまもなくから、彼には店番があったし、案外嫌いでもなかったので、毎晩香具弥が食事の支度をしている。
 何故かこういった現実逃避したい日の方が、凝った料理が作れてしまうものだ。
 ……それにしても、こうして茄子だの胡瓜だのを冷蔵庫から取り出して抱える一般庶民が、月の姫であるとは思えない。
 やっぱり恒峨は胡散臭いんじゃないかと疑う香具弥であった。

 そうして夕食の準備も殆ど終わったが、香具弥はふと気がついた。
「あ。明日のお味噌汁の豆腐がないから、買ってくるねー」
 おー、という店の方にいる竹流の声を背中に裏口から家を飛び出す。

 夏であるので宵の口でもまだ明るい。無事に近所のスーパーで、少女が豆腐を手に入れた帰り道――。
「あれは……?」
 店の近くの児童公園に、一人寂しくパンをかじる恒峨を見つけた。
「なにしてるの?」
 香具弥が突然声を掛けたことで、恒峨は驚き叫んで仰け反った。落としたものは星型と月型の袋入りのパン。
「星パン100☆……?」
 袋に書かれた商品名を香具弥に復唱され、恒峨は穴があったら埋まりたいような気分になり、真っ赤な顔をして身を小さくする。

「恒峨さん……は、本当に月の人?」
「た、たとえ野に下ろうとも、私はれっきとした月王の臣下ですっ!」
 自棄くそのように叫び、光る月の紋章や地球行きのパスポートなどを次から次へと取り出す恒峨。
 分かったわよ、と香具弥は彼のそれを制し、もしかしたら月は竹流の店より貧乏な国なんじゃないのかな……とそこはかとなく心配になる。

「うちもお金ないけど、今夜だけでもごはん食べに来る?」
「何をおっしゃいますかっ!私は勅命で来ているのですよ! そのような……」
「だって、パンだけじゃ栄養失調になっちゃうよ」
「星パンはビタミンやミネラルも含有してます!」
「何やってんだお前ら」
「タケちゃん!」
 二人で言い合っていると、突然竹流の声が割り入った。実は香具弥が公園で見知らぬ怪しい男と痴話喧嘩をしていると、竹流の店に近所の老人から報告が入ったのだった。

「この人、今夜泊めていい?」
 香具弥の問いに竹流は眼鏡の奥の眼を瞬かせて彼女を見、恒峨を見て、そして星パンを見て――、心から大きなため息をついた。
 それは恒峨のプライドを益々傷つけたが、結局心配する香具弥とそんな香具弥に結局甘い竹流に引きずられるように、彼は二人の家に連れ込まれたのであった。

 竹流の祖父の代から続く、今や切手から学校指定の体操服から携帯電話やはたまた不動産まで、何でも取り扱うこの雑貨点・天野屋。店と隣接する古い茶の間で、恒峨を含めた三人は食卓を囲むことと相なった。
 姫にこのような事をさせるなどと……としのごの言っていた恒峨だが、やがて空腹に耐えかねて香具弥の料理を口にする。
 久々にまともな食事を口にしたのか、その後は黙っていそいそと箸を進める恒峨。竹流の晩酌の焼酎を水と間違えて飲む頃には、いけませんを繰り返しながらも開襟状態。

「秘書官って大変なのね……」
 酔い潰れて茶の間に横たわり、寝息を立てる銀髪の美青年を見ながら、夕食の片付けをする香具弥はしみじみと呟いた。
 そうだなあと棒読みで答えながら、竹流は煙草を口にプロ野球を見ていた。

 月の話はまだ全然ぴんとこないものの、月の使者はどうやらそれほど悪人ではないように香具弥には見えた。


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 突然のことに頭をくらくらとさせる香具弥に、現れた月からの使者・恒峨は彼女の都合も気にもせず、早速話し始める。
「今度の中秋の名月の晩、姫には月行きの汽車に乗っていただきます」
「汽車ぁ?」
「ジェット機をチャーターできる程の国家予算はありません」
 益々怪しすぎる……と震える香具弥と、どこぞの銀河鉄道9三つをのほほんと思い浮かべる保護者の竹流。
「汽車は年一本しか便がないので、今暫くお待ちください……。あ、勿論、グリーン席を用意しておきますから」
「そういう意味じゃなくて……」
 事の次第に全くついていけない香具弥が、どのようにこの人の話を聞かない青年に話せばよいのか口ごもってしまうと、それまで無言だった竹流が、煙草の灰を落としながら口を開いた。

「――あんさあ……月の兄さん。コイツが月の姫さんになるっつうコトは……やっぱ、それらしくしろってコトだよなあ」
「無論」
「商売とか始めたりしたら?」
「たとえ国家予算が火の車と言えども、一国の姫がそのような事をするなど許されません! ただでさえ、罰として下天に下っておられたのに……」
 これ以上国民の反発を買ってはならないですからと、恒峨はぶつぶつ呟く。
「だとよ」
 そこで竹流は立っている香具弥を振り仰いだ。

「おめえの夢は?」
「へ?」
 突然尋ねられ香具弥は素っ頓狂な声を上げたが、やがてぽつりと答えた。
「……骨董商……」
 およそ今どきの女子高校生らしくない夢なので、声に出すことが恥ずかしい。しかし女子高校生らしくなかろうとも、趣味の骨董品を、竹流と共に守ってきたこの小さな雑貨屋に並べることが、香具弥のささやかな夢であったのだ。
「そーゆーコト、月のお姫サマはしちゃいけないんでしょ? だったら」
 竹流はそこで煙草の煙を吐き出すと、ぐりぐりと乱暴に灰皿で潰しながら恒峨に宣告した。

「――あんたらに香具弥はやらないよ。この子の夢を奪いたいっつうような奴等なんかには……、やらねえ」

 口端だけで笑って、目は恒峨を押さえつける。
 滅多に聞かないだらしない保護者の保護者らしい科白に、香具弥の方が驚いてしまった。

「な、なんて身分をわきまえぬ言動……! ならば仕方ありませんっ」
 しかし思い込みの激しそうな恒峨は、これくらいで怯みはしない。そこでびしっと竹流を指さし、彼もまた宣言した。
「これから、姫の元に五人の求婚者が現れるでしょう! 貴方がそこまで言うのならば姫をその求婚者等に奪われぬよう、守ってみるがいいっ。それくらい出来ぬ者にそのような戯れ言を言う資格は……」
「しのごの言ってようは帰るまで変な虫がつかねえように、俺に見張れっつーの? てめえの力じゃ出来ねえからってよぉ」
 鋭い竹流の突っ込みに、ぐっと言葉に詰まってしまった恒峨を、「そうなの?」と横目で不審そうに見る香具弥。

「と、とにかく! 貴方に姫をこの先も守る資格があるか、やってみなさい!」
 そんな二人の視線から逃げるように、恒峨は甲高く叫ぶと出ていってしまった。

 後には、静かな閑古鳥……。

 やがて香具弥は呆然と口を開いた。
「タケちゃん……」
「ん?」
 信じ難いが彼女が竹藪で竹流に拾われたのは、紛れもない事実であった。
 しかしだからと言って、今すぐこの異常事態に対応できるものではない。
「驚いたら、おなか、空いたね……」
「おー。飯だメシ」
 人は処理しきれない事態に陥ると、現実逃避に走るものである。

 物事に動じない竹流の呑気な返事を聞きながら、これが変な夢であって欲しいと切に願う、香具弥であった……。


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 天野 香具弥(アマノ カグヤ)。高校一年生。
 「それ」の始まりはいつもと変わらない、高校の帰り道のアスファルトでのことだった――。

「姫。お迎えにあがりました」

 銀髪の美青年が、突然少女・香具弥の目の前に膝をついた。その夢の国の住人のような言葉は、この日本においては不気味なものとして感じられる。
「月の世界へ還りましょう」
「はあ?」

 ――確かに私の名前は「カグヤ」だけど、ただの女子高生だぞ……。
 そう思った香具弥は関わり合いにならない方がいいと、さっさときびすを返した。
「まあ、他をあたってください」
「思い出されないのもごもっとも……しかし罪を償われた今、月に戻られ月の姫として……って、姫?」
 銀髪美青年の陶酔しきった言葉の途中だが、香具弥の姿はもうそこにはなかった。

 夏は開放感がありすぎて、変なのが多くて困る……と香具弥はため息をつきながら、家に帰った。
「ただいまー」
「おう、おけえり。って何だ、やけに疲れてんなあ」
 「天野屋」と書かれた古い看板の掛かる引き戸を開けたその店先に、香具弥の保護者である竹流(タケル)がいつものように煙草を口に座っていた。

「うん……何か変質者が居てね」
「ほう」
「あたしのこと月から迎えに来たって……」
「……マジかよ」
「変わった冗談……て、どしたの? タケちゃん」
 てっきり笑い飛ばされるかと思ったのに、竹流は煙草をぐしゃっと潰すと頭を抱えてしまっている。
「あー、そう」
 そして彼は大きなため息をつくと天を仰いだ。

「なによー。何なの?」
 竹流は再び煙草を取り出して口に咥えると、その眼鏡越しに香具弥を見た。
「……覚えてるよな? 此処へ来た日の事は」
「う、うん……」
 竹流は齢三十一、香具弥は十六くらい……「くらい」というのは、 四つか五つの時に香具弥は竹流に竹林で拾われたからであった。その前のことは何も覚えていないのだ。

 ――ただ、怖くはなかった。気がついたら困った顔の竹流がそこに居た。
 それが香具弥の一番古い記憶であった。

『なんだお前も独りぼっちなのか』
 そうしてニ人、手をつないで家に帰ったのだ。
『名前忘れた?』
 かぐや姫みたいだなと、まだ若かった彼は捨て子にこの名をつけた。

 香具弥は懐かしいことを思い出すと指を立てた。
「で、警察とか行って、今に至る」
「きっとその出会いがそれだ」
「タケちゃん!?」

「流石は月より選ばれし姫の守護者…」
 その時、先程の銀髪の美青年が突然手を叩いて店に入ってきた。

「ちょっと!? つけてきたの?」
 香具弥は驚いて振り向くが、青年は無視して相変わらず自己陶酔しながら話し出す。
「そしてその男が姫の守護者となってから以後、我々は姫の養育費として、このひなびた店の商売繁盛を支えてきたのです」
「あーだからこの不況にこんな小売店が倒産しないワケ」
 竹流は雑然と日用雑貨の並ぶ古ぼけた店内を見て、うんうんとやけに納得している。

「あ、あんたらねえ……」
 呑気な男二人に対し香具弥は一人、頭がくらくらしてきた。
「あなたは下天に下った月の姫……そして私はあなたを月へとお迎えする役目を担った、恒峨(コウガ)と申す者」
 恭しく頭を垂れる青年に、香具弥の口はあんぐり開いたまま。

 外ではみーんみーんと蝉の声、隣からはのんきな煙草の煙。
 いつもと変わらない、平凡な女子高生の日常は突然乱されることになった……。


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○あらすじ:
血の繋がらない青年・竹流(タケル)と暮らす、平凡な女子高校生・香具弥(カグヤ)の前に、突然謎の月の使者が迎えに現れた。それから彼女を巡って6人の男共が火花を散らし始める…!?
香具弥は月に戻るのか?一体誰を選ぶのか?
現代版かぐや姫。かなりドタバタ、ちょっぴりしんみり。ほのぼの年の差恋愛ファンタジーです。(恋愛ものですが、ラブシーンはありません)

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○目次:
ACT1 「月の姫」
ACT2 「宣戦布告」
ACT3 「月の使者」
ACT4 「一人目の求婚者」
ACT5 「二人目と三人目の求婚者」
ACT6 「四人目の求婚者」
ACT7 「修羅場」
ACT8 「最大の恋敵」
ACT9 「恋愛戦争」
ACT10 「月へ帰る日」
ACT11 「罪」
ACT12 「五人目の求婚者」
ACT13 「勇気」
ACT14 「月姫の罪と夢(前編)」
ACT15 「月姫の罪と夢(後編)」
ACT16 「香具弥の正体」
ACT17 「香具弥の罪?」
ACT18 「片想い」
ACT19 「一触即発」
ACT20 「一触即発2」
ACT21 「初めての喧嘩」
ACT22 「竹流の本心」
ACT23 「思春期」
ACT24 「あの日の眼」
ACT25 「初デート」
ACT26 「遊園地だよ!全員集合」
ACT27 「追跡」
ACT28 「分かり合いたい人」
ACT29 「爆発」
ACT30 「別離」
ACT31 「最悪」
ACT32 「月姫覚醒」
ACT33 「名前を呼ぶ声」
ACT34 「二人の覚悟」
ACT35(最終話) 「願い」(前編後編) 

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※追記です。「月姫異聞」が読みにくかったので、ブログで再掲載を始めました!文章は修正しますが内容は全く変わりません。(実は他の作品も全部修正しています~。現在密かに「ネムリヒメ。」も毎日少しずつやってます…長い…;)

さて現在はネムリヒメ。の続編の下書き中です。また日曜日あたりにUPできることを目標にがんばってます~。
一夜ってこんなにえろえろだった!?とつっこまれそうなほど、今回も懲りずにえろネタ攻めです。相変わらず作者も泣き笑いしていますよ;全話Hネタで突っ走るつもりかよ、私は、みたいな。(呆れられてませんかねえ…とどきどき)
いやもちろん、この連載はただのえろ目的ではなく、10代の未成年の立場では悩まないような30代の女性の生き方と言いますか、大人の「性」に対する葛藤と言いますか、そういったものも書けたらなと考えています。
それこそそういった内容はリンク先様(年齢制限あるので直リンクしませんが、リンク先またはブロともの廣瀬様のページへどうぞ~)でしっかりと取り扱われておいでなので、自分などの書き方としてはやんわりと入口の問題提起だけして、あとはただのらぶらぶになっていくのですが…やはり続編ですから、基本は主役二人の甘らぶ生活が書きたいので、そのあたりはさじ加減を考えながら書いていくつもりです。
でもってやっぱりえちい場面とかも書きたいんですがね;相手役視点の悶々とかもv


さて、今日は(も?)ちょっぴり落ち込み気味です。前から言ってたオフの関係で今までみたいに書けなくなるかもーの件ですが、どんどん具体的にタイムリミットが見えてきちゃいました…。
まだ先のことなのでその時にまたブログに書きますが、とりあえず2月(早ければ1月後半)から、完全に今の作業時間の半分以下になりそう(涙)その後3、4月は多分ほとんど書けない状況…かも!?
5~6月以降は、ほんっとえらいことになりそうで(←今日わかった)、どんな作業環境になるのかまったくもって予測不能、という感じです。(まだはっきりと書けないので、意味不明でごめんなさい)

でも今のように、好きなことを好きなように書けてご反応がいただける、この環境は私にとって何ものにも変えがたい幸せなことなので、どんなに細々とでも執筆やサイトを続けていたい、休止することは嫌だな、ともがいているところです。
とりあえず今から少しずつ、空き時間を作って(更新が今のうちからややゆっくりになるけど)書き溜めていこうと思っています。だからほんと執筆ばかりに時間を使って、前言ってた好きなお話の紹介とか全然できていないし、交流もできてないし不義理になっちゃっていたり、その間にもがんがん更新や挑戦をされている方や文章力のある方を見ると、もっともっと自分もがんばりたいようーと発奮されて、でも同じようにはできなくて苦しくなったり。

週2更新が、これから2週間に1度とかになってしまうかもしれないけど、それじゃつまらないと思われてしまうかもしれないけれど、それでもどうにか書き続けていたいなあと貪欲に思っています。実際、その変化が本当に訪れる半年後に、今の読者様の何割の方がまだ読んでくださっているかは分からないけれど、私自身がそうしたいので。何よりも書きたいものが多すぎて困ってしまう。(リクいただいている続編ものは少なくともみんな書きたいです!)
でも今は世界中でインターネットが使えるから、何処にいても何をしていても、こうしたものが変わらず発信できるので便利な時代になったものですがね…。

不安と悔しさから、また愚痴みたいな感じでごめんなさい(情けねえ)。
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寝不足です;とりあえずなんとかR18のなんちゃってオフィスラブの方、原稿上げました~。UPまでしばしお待ちください…(→追記:夕方UPになりました!)
前も言いましたがやっぱりR18は1話にひとつはらぶしんとか入れた方がいいかなあということで、そこまで話をもっていくために、1話の文字数が多くなるから時間かかるんだなあと思いました。でもR18と言いながら、まだ官能シーンにたどりつかないんですがね…。

これからおちごとなので、更新報告のみですみませんがまた!

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