碧落の風見鶏 20090729
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社大(takao)

Author:社大(takao)
ネットにて少女漫画風のオリジナルNL恋愛小説書いてます。R指定なしから18禁まで…。よろしければリンクより、サイト「碧落の砂時計」へとお越しくださいませ。
呟いていることは書いているお話についてがほとんどですが、雑記ではテレビネタ(オジサン役者、時代劇)、漫画アニメの2次元とかに反応中。お酒大好き。

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碧落の風見鶏
オリジナル恋愛小説もどきを書く人の、お話置き場だったり制作日誌だったりひとりごとだったり。
「月姫異聞」完結!
「月姫異聞」再UP連載、無事完結いたしました!はじめましての方も以前のものを読んでくださっていた方も、ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。
一応、ラストはほんとーに若干ですが以前のものに加筆をしました…はい(汗)

さてお引越しですが、無事にたどりついたものの密かに海の向こうへと来ているので、ちょいとヘビィな環境におります。今年はなんだか環境の変化が激しすぎる年です。
身も心もぼろぼろのくせに、ひとまず更新をストップさせないことを最優先にしているため、メールのお返事や連載ものの続きがとどこおってしまい、拙作にもかかわらず待っていてくださる皆様には申し訳ないです…。
書き溜めてあるものをひとまずUPし、その間に書き下ろしの連載ものをがんばって書きますので、しばしお待ちくださいませ。

飛び立つ前にオフでご一緒くださったT様には心より感謝申し上げます!

以下は7/25にいただいた拍手メッセージへのお返事です。お返事遅くなって申し訳ありません↓

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■ 続きを読む。 ■
月姫異聞―ACT35 願い(後編)―
「……それにしても――、」
 そこで再び笑顔を消すと、恒峨はため息混じりに呟いた。

「「殴られ損、だったな」」

 竹流はそう言うと同情するように、溜め息をついた。もっともあのプライドの高い月の使者のことだ、そんな風に彼に思われていると知ったらもっと傷つくだろうが。
「何が?」
「なんでもねえよ。何だかんだ言って、悪人じゃなかったな、アイツは」
「恒峨さんのこと……?」
 聞き返した香具弥はその言葉に同意して、こっくりと頷いた。

 ――仕事第一みたいな人なのに、最後は私の気持ちを優先してくれた。何だかんだ言っても、私の故郷の人で優しかった。そして私の「本心」に気付かせてくれた――。
 香具弥がそう思い、感慨に耽っていると、
「何? 月に戻ればよかったとか、思ってんの?」
意地の悪い笑みを浮かべて、竹流がそんなことを口にする。
「思ってないよ!」
「ホントは奴が五人目の求婚者だったら――とかさ」
「今更何言ってんの!? タケちゃんの、ばかっ!」
 気が付けば、香具弥は先程から竹流の膝の上に座ったままなのだが、それよりもこれだけの覚悟を決めさせたくせに尚もからかう彼への怒りが勝り、その目の前の胸をぼかすかと叩いた。

 ――でも、五人目の求婚者って……、結局誰だったのかな?
 もしもこの先まだ、その人物が現れることがあるなら――、いやいっそ……「彼」であったらいいのに……。
 そう思った香具弥は、竹流のTシャツをぎゅっと握り締めた。

「タケちゃんは……、私がいて、迷惑……?」
 そのまま汗をかいている青年の胸に頬を寄せ、ぽつりと尋ねる。今まで勇気がなくて問い掛けられなかった、その質問。彼が本気で答えてくれるかも分からず、恐くて言えなかったその言葉に、
「――いや、全然」
同じくその気持ちを言葉にしてよいのか分からなかった竹流も、ゆっくりと素直に答えた。本心を言わないことで彼女を失うなんてことは、もう御免であったから。

 その言葉によかった、と香具弥も心から安心して微笑む。
「ていうか、タケちゃん、ちょっと性格変わったね」
「あ? そーしろっつったのは、おめえだろーが」
「そうだけどさ!」
 香具弥ががばっと顔を上げると、今までとは少し違う表情に見えるが、おそらく心から笑っているのであろう、竹流の笑顔にぶつかり――思わず心臓が高鳴って、言葉を失った。
「嫌なら、やめるけど」
「い、嫌じゃない!」
 慌ててそう言う香具弥を竹流はさも面白そうに笑い飛ばすと、優しくその頭を撫でた。

 大きな手で、頭を撫でられて――。
 そんな風に見詰められて――。

 ……あれ? 何だろう。今までと……?

 そんな事を互いに感じながら、竹流の手が香具弥の柔らかい頬に触れると、香具弥は身をびくんと震わせた。
 その大きな手が、ためらいながらも少女の頬をそのままそっと撫で始める。いつか見たあの鋭い眼で、己の眼を見竦められ、香具弥は軽い恐怖を感じると共に身動きが取れなくなる。

 ――怖い。でも、何か――。

 自分でも知らない身体の奥が本能的に熱くなり、それがいけないことのような気がするのに、何か、期待してしまう。
 人間として生きていく月の少女が、ヒトとしての「何か」新しいものに目覚めようとする。その儀式のように、顎が傾けられた。――その時、

「香具弥!!」
「「「天野!」先輩!!」」
四つの声が竹薮に響き、その正体を香具弥が知る前に、二人は慌てて身体を離した。


「「心配したんですよ〜! 先輩〜!!」」
 龍と燕の双子が、香具弥に向かって泣きながら抱きついてくる。香具弥は二人に「ごめんね、ありがとう」と言いながらも、自分の身体が火照り始めていたことに変な罪悪感を覚えるが、おいおいと泣く二人をなだめているうちに、徐々に先ほどの言い知れない感覚も薄れていく。
「オッサン、てめえ! こんなトコで何して――ひゃ(や)めろっ」
 その香具弥の横では火衣が竹流に食ってかかるが、その頬を竹流がいつも以上に眼が笑っていない氷の笑顔でつねり、御行は私設捜索隊の打ち切りを携帯電話で告げるのであった……。


 そして、不思議な日々が終わり――。


 ・・・・・・・・・・


「いってきまーす」
 おう、今日も元気に学業に励め、といかがわしい記事が満載のスポーツ新聞を読む竹流に送り出された香具弥。金色だった髪も瞳も元の黒に戻り、彼女の中から月姫が現れることは、もうなかった。
 何故なら、「二人」の願いも夢も同じだったのだから。

 月の姫と言われたことも、秋となった今では嘘のようだが、今朝もまた火衣が現れ龍と燕が現れ、御行もやってきた。
 魔法が解けても、夢から醒めても、ただのちっぽけな「香具弥」であっても、変わらない温かな人々。


 ――そう。「私」は、大切な人達と共に、ここで生きていく――。


    〜END〜


>>最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました!
少女漫画に触発されて書いたドタバタ年の差ほのぼのらぶファンタジー、初稿は今から6年前でした。ちなみにこの内容は当時の読者様から「かぐや姫」を元にしたお話を、とのリクを頂戴したため生まれました。
今ではこうしたノリのものが以前よりも書けなくなってしまったなあと思ったので、今回一度下げたものを加筆修正して再UPということにいたしました。いつかまたこういう感じの気楽にドタバタしたノリのものや、もーっとらぶらぶ度高めの(男性年上の)年の差ラブなんかも書いてみたいです。

…というかこのあとの盛り上がった竹流と香具弥はどうなるのか…(笑)皆様のご想像におまかせしますv
それでは、読んでくださった皆様、途中拍手や感想等で応援してくださった皆様に心より感謝申し上げます!ありがとうございました。



>>目次へ(ランキングへの投票はこちらから(PCのみ)。面白かったよ、とのことでしたらこちらか拍手をぽちりとお願いします…)

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月姫異聞―ACT35 願い(前編)―
 

 ・・・・・・・・・・


 ……どうして、わたし、ここにいるんだろう……。

 今から十二年前のこの場所で。一人の幼い少女は、緑の竹薮を見上げた。竹の囁きは綺麗で優しく少女にとって恐怖はなかったものの、どこか切なかった。どうしてなのか、分からなかったが――。
 すると不意にがさりと音がして、少女は顔を上げた。そこには冷たい眼をした一人の若い男が立っていた。
 人も、自分すらも、必要ないと言っているような感情の乏しい眼。
 しかし何かの欠片が足りなくて、本当はそれをずっと探していたような、それ。

 ――きっと、わたしとおんなじね。

 二人は正反対の表情をしていたが、同じ眼をしていた。少女は青年に向かって優しく微笑む。

 ――絶対にうらぎることのない、大切で唯一のだれかと、いっしょに生きていきたいよね。

 冷たい眼の青年は、このような幼い少女が薄暗い場所にいたことに驚いたようだったが、微笑んだ彼女が何故か自分と同じ眼をしていたからか――ぎこちなく相好を崩した。
「なんだ、お前も独りぼっちなのか」
 少女は頷いた。
「一緒に、来るか?」
 少女は更に嬉しそうに、大きく頷いた。

 一族から見捨てられた少女と、家族を失って一人で生きていた青年は、この日から一緒に生きていく。


 ――ずっと一人きりだった。苛立てば仲間と騒いで暴れるか、女と寝るかして気を紛らわせていた。「寂しい」などと、思ったことはなかったが、満ち足りているとも思わなかった。
 そんな自分と同じ様に、何処か何か足りなくて、にこにこ笑い続けている少女。

 出会った瞬間に、全てを失って以来、初めて無償で自分を心から信じて必要としてくれる人間に出会ったと思ったのだ。それは青年だけでなく、少女も同じであった。

 ――ねえ、一緒に生きていこう?
 ――ひとりぼっちは、寂しいよ。

 だから自分の全て……命すらも懸けて、愛おしんで。慈しんで、育んで。


 ――私の夢は、この地球で生きること。それを叶えてくれる人は、月にはいなかった。ただ「この人」だけが、竹薮に居た私の存在にもう一度気付いてくれた。
 そして今の姿の「私」……天野 香具弥の夢は、骨董商になって天野屋で骨董品を売り、「彼」の商売を助けること。
 どちらもこの今の私を抱き締め、命すら懸けてくれた人と一緒に生きていきたいと願う夢。

 それでも、いいですか?

 貴方も、一緒に居たいと、思ってくれますか――?


 ・・・・・・・・・・


 竹流ははっと目を覚ました。そして自分が地面に寝ているという事実に直ぐ気が付いた。
「香具弥!? 大丈夫か!?」
 腕の中にしっかりと抱いていた少女を揺さぶると、彼女も気が付き、まるで夢から醒めたように目を開ける。
「え? 私……? って、タケちゃんこそ大丈夫!」
 香具弥もがばっと起き上がり、二人それぞれに自分の身体の傷を確認するが、
「俺は……」
 ――痛く、ない……。
「無傷だ」
「嘘! あの高さから落ちたのに!?」
「ああ……」
 竹流も呆然として頷くが、既に空に向かって昇り始めていた月行きの列車から飛び下りたにしては何の衝撃もなく、寧ろあれが現実の出来事だったとは思えなかった。それにまた、たな違和感がある。

 その違和感の理由に気付いた竹流は、勢いよく夜空を見上げた。竹藪の隙間から見える、今宵の月は――、
「見ろよ……」
「え?」
「今日は、十五夜なんかじゃねえ。本当の中秋の名月は、本当はまだ先のはずだ」
「えっ!?」
 香具弥も空を見上げるが、そこには円にはまだ満たない形の月が昇っていた。実は香具弥のことを気にしていた竹流は以前から暦を確認していたのだった。
「じゃあ、あの汽車は……?」
「本物、だったのか?」
「え?」
「『アイツ』の、まやかしだったんじゃないか。今日の事は、汽車も何もかも、全て」
「どうして?」
「……さあ?」
 ――本当は分かっている。竹流は溜め息をついた。


「すみません。月までお願いします」
「あいよ。兄さん、景気いいねえ〜」
「残りの出張費、全部使うんで」
 月光タクシーに乗った恒峨は、疲れたというように深く息を吐くと、車のシートにもたれた。
「おや兄さん、怪我してやせんか? 喧嘩ですかい? いやまったく、お綺麗な顔がもったいない……」
「そうですね……」
 窓から見える地上を見下ろしながら、恒峨はもう一度深い溜め息をついた。
 ――もう今の月王にしてみても、今から何代も前の姫になる月姫を呼び戻すことは、必須の命令ではなかった。未来の月宮を任せるための候補は、王族には他に何人かいるからだ。
 月姫を呼び戻そうと思ったのは、半分は恒峨の独断――曽祖父・瀞峨の話を恒峨自身が聞き、彼の遺志を継がねば、と何かに導かれるように思い立ったからであった。

 外見だけでなく性格も曽祖父によく似た彼が、あの少女に同じ様に惹かれたのは確かだ。
 しかし「恒峨」が惹かれたのは、「月姫」にではない。あの貧乏臭い店で一生懸命働く黒髪の少女に、だったのだ。
 その彼女が「そこ」でないと、彼女らしく生きられないと言うのなら、その望みを叶えてやるしかないではないか。瀞峨と同じ気持ちであったとしても、自分は彼とは違う人物なのだから、同じ道を辿るつもりはない、と恒峨もまた最後に決断したのであった。

 ――だが、古と同じ少女に失恋するとはな……。

 恒峨はそう考えて、ふっと苦笑した。
 本当に五人目の求婚者は、「奴」だったのだろうか。いやそうだと認めたくもないのを差し引いても、そんな軽々しいものであるはずがない。

 誰もが欲しがるあの少女が選んだ、唯一の人物なのだから。


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