碧落の砂時計 青竹迷風―第3話 欲望(後編)―

碧落の砂時計

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「は、はに!?」
 「何?」と言おうとしたのだろう。あさぎは清矢郎らしからぬ行動と、今の甘い行為のギャップに眼を丸くして尋ね返す。
 本当に表情がよく変わり、可愛いな、と内心では思うのだが、これ以上こんな場所でこの行為にのめりこんではならないと、清矢郎はわざと己の願望と決別した。
 少女と対照的にぶすりとした顔をした少年は、手を離しながら彼女に言った。

「……これ以上すると、止まらなくなるから」

 あさぎはそう言って彼女から顔を逸らす清矢郎をぽかんと見ていたが、やがて唇を閉じたまま、もごもごと恥ずかしそうに動かすと彼のTシャツを掴んだ。
 少女の思っていることも、言いたいことももしかしたら今の自分と同じかもしれないと思った清矢郎は、勿体無いな、と正直なところは思いながらも彼自身に言い聞かせるように彼女を諭す。
「外だし、第一、あさぎが――」
 彼女が妹みたいなもので恋人同士といえども、「生理なんだし」と高校一年生の女子にあからさまに言うのは、付き合って一週間ではまだためらわれた。あさぎも清矢郎の気遣いが分かったようで、俯く。

 気まずい沈黙が流れ、煩い蝉の鳴き声を思い出したように二人は聞いていた。
 そしてあさぎは再び彼の大きな手に指をそっと触れると、呟いた。
「……せーしろーの、生真面目。かたぶつ」
 詰るような言い方に、清矢郎は無言だがやや口を曲げる。少女のことを想って泣く泣く我慢したつもりなのに、女心とは中々難しいもののようである。

 しかし頑固な彼は、自分が間違ったことをしているとも思えなかった。月経の最中の女性を外で無理矢理犯して、その身体に何かあったらいけないと、女性の身体のことは分からないので心配になってしまう。
 それに大切なあさぎだからこそ、彼女自身にも自分を大切にして欲しいと、兄貴分としては思うのだ。
「悪かったな」
 清矢郎はそう言うと、あさぎの頭をぐしゃぐしゃと撫ぜた。触れたいのに触れられない、精一杯の抵抗であった。そして彼女もまた欲求と現実の狭間で禁欲に身を焦がしているのだろうか。

 頭を撫でられたことに少し嬉しそうな顔をすると、少女は髪を整えながらもう一度彼を見上げた。既に歩き出している清矢郎の背中を、あさぎは幼い頃のように追い掛けて問う。
「次、いつ会える?」
「……いつでも」
 そう即答した清矢郎に、あさぎは追いつくと提案してきた。

「は、花火、あるじゃん。おばあちゃん家の近くで」
「――ああ、」
 幼い頃互いの家族と二人で行ったそれだと、清矢郎にも分かった。そしてあさぎの言おうとしていることも察した。

「いつだっけ」
 そう答えたのは、彼としても「一緒に行こう」の意思表示のつもりであった。

 そして次の、逢瀬の約束を交わす。
 幼い頃の思い出と、空白の時間を二人で辿り、必死で辛かった四年間を埋めようとしている。

 否、四年前の忘れられない幼い情熱を、大人に近づきつつある身体で体現しようとしているのかもしれなかった。
 十八と十六の、少年と少女が。


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