碧落の砂時計 月姫異聞―ACT7 修羅場―

碧落の砂時計

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 月に還らなければならない、と月からの使者に呼び寄せられる女子高校生、香具弥……その彼女に五人の求婚者が迫る。

 修羅場の戦いを始めた、火衣、龍、燕から自分を助けてくれた同じ高校の先輩を、香具弥はまじまじと見上げた。「生徒会活動」の言葉に彼女も言われてみれば、講堂のステージ上でその顔を見た事があるような気がした。
「生徒会長……さん?」
「石田、だ」
 御行は苛立たしそうに頷きながら告げた。香具弥は確かに生徒会活動には関心は薄く、それは否めない事だが、それより不可思議な事は……。
「あ、お顔知らなくてごめんなさい。――でも、どうして私なんか知ってるんですか?」
 この春に入学したばかりであるのに……。そう思った香具弥は真っ直ぐに御行を見上げた。逆に御行は香具弥から目を逸らす。
「……俺も質問してたんだが」

『どいつとつきあってるんだ』

 その質問を思い出した香具弥は口を噤み、下を向いた。とりあえず、
「誰ともつきあってませんよ……」
と正直に答え、だから、と顔を上げた。
「だからどうして、答えなくてはいけないんですか?」
 御行は無言で香具弥を見下ろした。全ての想いを込めた強い眼差に見竦められ、香具弥はぐっと言葉に詰まったが、なんとかこの嫌な予感が当たらないでほしいと思いを巡らせていた。が、
「言えるわけ、ないだろ……」
言いにくそうに言葉を紡いだのは、御行が先だった。
「ロクに話したことも、無いのに」
 自嘲のような響き。

「天野は変わっているが、存外、人気あるな」
 今度は失礼な言葉に香具弥は唇を尖らせるが、
「『面白い』と思った……俺も同じ穴の何とやら、だな」
そう呟き今度は自分を切なげな表情で見つめる御行に、彼女は何も言葉を返す事は出来なかった。
 ただ「最悪の予感」――この少年もまた求婚者のひとりではないか、ということが当たりつつある事に、少女は足元が崩れそうな思いだった。そして御行が不意に自分に顔を近づけたので、香具弥は焦る。

「せめて存在は、覚えてくれ」

 ――嗚呼何で……、何の因果か……。香具弥がくらくらと夏の暑さに目眩を覚えていると、
「香具弥!」
火衣の声に更に恐ろしい現実に引き戻される。そこには何故か服が乱れて疲れた様子の、火衣と磯貝家の双子がいた。
「誰だ、てめえ……」
「阿部先輩、紳士的に」と囁く双子のお陰で火衣は御行に殴り掛かる事はなかったが、一触即発の勢いで御行の前に立つと、背の高い彼を睨み上げた。
「もう、いいだろう」
 状況を察した御行は、呆然とする香具弥を庇うように手を出した。その態度が火衣を益々苛立たせる。――昔から香具弥のことは、自分が一番見ていたのに……、と。勿論、龍や燕だって内心は決して穏やかな気持ちではない。

 一人の少女を巡り、見事な四竦み状態。
 しかしこの場で誰よりも逃げ出したく己の運命を恨みたく、困っているのは、他ならぬ香具弥であった。
 ――どうやってこの場から逃げ出せばよいか。否、逃げても争いは収まらない。一体どうすれば……。
 その時、混乱する香具弥の頭上に新たな、しかし聞き慣れた何よりも安心する低い声が拳と共に降ってきた。

「何時まで油売ってんだ」
 香具弥が軽く叩かれた頭を押さえて振り向くと、そこには見慣れた眼鏡の三十路男――竹流が立っていた。


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