碧落の砂時計 月姫異聞―ACT8 最大の恋敵―

碧落の砂時計

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 四人の求婚者に囲まれ、困惑している香具弥に竹流の拳がお見舞いされた。
「痛い~」
「俺、今日これから商店街の寄合だから、店番してくれ」
 彼の言葉に、寄合?聞いてないぞ……と香具弥は思ったが、此処から連れ出してくれるのなら、もはやどんな理由でも構わない。彼女は素直に頷いた。

 四人の少年に、ではまた、と頭を下げ、あっさりと駆け去ってゆく香具弥を呆然と見送りかけた少年たちは、
「ちょっ……」
と彼女を呼び止めようとしたが、丁度香具弥への視界を遮るように、竹流がその間に立った。そして彼は四人の方を見もしないで、煙草を出すといつもの様に吸い始める。
「兄ちゃん達も難儀だな」
 自分の身内が誰にも返事しない事の謝罪か、それとも月の呪いに翻弄されている事に対してか。竹流は誰に言うともなく呟くと、煙草を咥えたままその場を去ろうとした。

「――おい、オッサン」
 しかし火衣の呼び止めに、ぴくりと反応すると足を止める。

 そして「あのおじさんは」「天野先輩の保護者の方です」と御行に説明する龍と燕の声を背中に、火衣をゆっくりと振り向いた。
「なんだよ、火衣坊」
 火衣は昔っから香具弥に近づこうとする度、からかったり邪魔したりとする、この男が気に入らなかった。
「……過保護で結構な事だな」
「八つ当たりか?」
 竹流はいつものようにからかいの笑みを向ける。
「あぁ? あんたみたいに卑怯くせえよりマシだろ」
「卑怯?」
 しかし火衣の言葉に、その眼鏡の上の眉を顰めた。

「ああ」
「よく分からんが……四人がかりでいきなり詰めよったら、女の子はフツー逃げるぞ」
 三十路男の正論に絶句する、少年四名。
「それより一人一人の個性をだな、時間を掛けてアピールし……」
「さっすがこの界隈で遊び人の異名をとっただけの事はあるな!」
 素直に頷く龍と燕、そして何かを考え込む御行に対して、あくまで憎まれ口を叩く火衣の左頬を竹流は軽く摘んだ。
「中学生(※龍&燕)よりも背え低いからって……」
「カンケーねえだろっ!」
 その手をばっと払う火衣に、ふと一同同情。嫌味ったらしい竹流に思わず火衣も軽く手が出てしまうが、それは難なく避けられている。

 そして小さくなった煙草を下に落とし、さあ寄合、寄合……とわざとらしく出かける竹流の後ろ姿に火衣は大声で叫ぶ。
「それもどうーっせ、嘘だろ!」
 口に手を当てずっと考えていた御行が、それを聞きぽつりと言った。
「厄介な、敵だな……」
 思わず、龍と燕も真面目な顔で頷いた。


 その頃香具弥は、天野屋で竹流に言われたとおり店番をしていた。
 ――恐ろしく長い一日だった……。一日で四人の人間に告白されるなど、通常有り得ない。しかもどの少年にも、恋愛感情を抱いていないのだ。彼女は、疲れたようなため息を深くつく。
 しかしそこで、慌ててがばっと顔を上げた。
 ――待てよ? 恒峨の言葉では、求婚者は五人。火衣、龍、燕、御行は何度数えても四人……と言うことは……、
「まだ一人、いるの……??」
悲痛な声を上げて香具弥はがっくりとうなだれた。

 そして今にも五人目の求婚者が店の入り口から入ってくるような気がし、それが恐ろしく――竹流に怒られるかも知れないが、今日は開店休業だ、と少女は店のシャッターを慌てて閉めたのであった。
 
 
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