碧落の砂時計 青竹迷風―第1話 想い(後編)―

碧落の砂時計

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 それから、一週間後のこと。

「……勉強、大丈夫?」
「ああ、」
「怒ってる?」
「別に」
「なんか怒ってる」
「いつもどおりだろ」

「そりゃ、そうなんだけどさ……」
と、清矢郎の隣を歩きながら、肩を少し越す長い髪の少女――あさぎがぶつぶつと口の中で呟いている。この二つ年下の従妹の少女こそが、現在少年の心を乱している張本人なのである。

 清矢郎は怒っているわけでは全くないのだが、元からこういった顔と喋り方なので仕方がない。しかし彼女にそう言われて、こんなことでは嫌がられてしまうか、とふと心配になってしまう――それが彼の表情に微塵たりとも表れないことが、この少女を怒らせたり不安にさせる一因なのだが。

 初めてのセックスの後、夏休みに入り直ぐにあさぎから「会いたい」とメールが届いたのであった。
 メールのやりとりは、あの後も彼女の身体が気になっていたのもあり交わしていたが、それでも嫌われているかどうかなど、その文面からは分からない。よって清矢郎は彼女からそう誘ってくれたことには、非常に安堵していた。しかしそう思いながらも、そのメールのやりとりもぶっきら棒なものであったのだが。

 デートの内容は、「図書館で勉強しよう」というなんとも可愛らしく真面目なものであった。あさぎなりに、受験生である彼の邪魔にならないように気を遣ったのだろう。
 元々純情でお堅い二人は、まるで中学生のような初々しい様子で市立図書館までの道のりを歩く。互いに初めて異性と「付き合う」ということをするため、何をしてよいか分からないということもあった。

 ――付き合うより前に、既に身体の関係を結んでいることを除いては。

 そのギャップが、くすぐったいような感じも少年にはしていたが、それは少女も同じなのだろう。
 ちらりと少年を見上げては、眼鏡の奥の瞳と眼が合い、恥ずかしそうに慌てて俯く。そんな仕草をされれば清矢郎も無表情は保つものの、益々むず痒いような、身体の奥から何か熱いものが湧き上がってくるような、おかしな気持ちに飲み込まれそうになる。

 ――ふと、触れたいな、と思った。華奢で細い、その身体に。白い頬に。

 そんな性欲の強い自分に心底呆れ、軽くため息をつきながら清矢郎はあさぎから眼を逸らす。
 その態度が少女を「やっぱり、無理に会いたいって言ったから怒ってるのかなあ」と不安にさせていることに、少年は気付かずにいた。

 そしてあさぎが心配そうに清矢郎を見上げてきた視線を見返すと、彼はふと思い出したように問い掛けた。
「まだ、見えるわけ?」
「え?」
 あさぎは入道雲を背景に、清矢郎を見上げた。

「――金魚」

 清矢郎はあさぎを見下ろしているのだが、自覚しないまま、どこか笑ったような優しい表情をしているその顔を見て、少女はきょとんとした後に、ほんのり頬を染めた。そしてこくん、と恥ずかしそうに頷いた。

 彼にはあさぎが見えると言う、「金魚」の幻影は見えない。今の瞬間、少女の視界に赤い金魚がぱっと増えたことも分からない。だが、
『せいちゃんのこと、考えるたびに、見えるの――』
不思議なことを言う少女であるが、その幻影は自分への恋心が具現化したものだと彼女は言うのだ。

 変わった表現でも、彼女らしいと思えばそれすらも可愛らしく思え、やはりくすぐったい気持ちにはなる。
 ――そういう自分は、相当初めての恋に狂っているのだろうか。

 そう思うと無性に恥ずかしくなり、清矢郎はまたむすりとした顔になるとスタスタとあさぎの前を歩き出した。
「変だと思わないの?」
 あさぎは清矢郎の背中に尋ねた。
「別に」
 彼は背中越しに短く答えた。

 ……せいちゃんだって十分変な人じゃないか、と嬉しさの照れ隠しにあさぎがこっそり口の中で呟いたことに、同じく照れ隠しに彼女に背を向けて歩く彼は気付くことはなかった。


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クラップマークが無いやん!
時間があったら貼ってよね~

2008.09.19 17:22 URL | 廣瀬 #vUiOuJbU [ 編集 ]

>廣瀬さん
早速お越しいただき、そしてアドバイスもありがとうございました!ブログの使い方がまだよく分かってないようです;
早速設置いたしましたv感謝です~。

2008.09.19 21:25 URL | たかお #KVcJ/2wY [ 編集 ]

名作「幻影金魚」が帰ってきましたね!(笑)
なんて初々しい二人!
このガラスの十代(笑)めっ!と既に過ぎ去った時間に思いをはせております

2008.09.20 19:37 URL | midori #- [ 編集 ]

>midoriさん
名作だなんてとんでもない~。本編終了時から時間を置いてしまい、ブログでの連載となりましたが、読みにきてくださってありがとうございます!
本編のイメージを壊さないか心配ですが、こちらでもガラスの十代(笑)な二人の初々しく危うい恋と性を描きたいと思っていますので、主人公たちと一緒にその頃の想いをたどっていただけたら幸いですv最後まで更新頑張ります!

2008.09.20 21:11 URL | たかお #KVcJ/2wY [ 編集 ]













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