碧落の砂時計 月姫異聞―ACT12 五人目の求婚者―

碧落の砂時計

オリジナル恋愛小説の作品紹介+更新情報+お話置き場。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
 ――また……? 罪?
 香具弥は不思議そうな顔で、「すみません!ご無礼をっ」と慌てて彼女から手を放す恒峨を見た。

「同じ罪って、どういうこと? 昔何があったの?」
 その古の姫と変わらない、真っ直ぐな瞳に恒峨は息を飲む。――目を合わせてはいけない、と遠い記憶が彼に警告を与える。
「聞かないで、ください……」
 目を逸らした青年の銀の髪が揺れて、落ちた。
「……」
 不意に香具弥は彼の頭皮を引っ張らない程度にその銀の髪を持ち上げ、恒峨の顔を露わにした。隠された真実が見えるような気がしたからだ。
「ひ、姫!?」
 恒峨が驚いて思わず顔を上げると、真っ直ぐな少女の眼差がそこにあった。

 ――しまった――!
 そう思ったが、もう遅い。代々の月の臣下と同じく、少女のまっさらな心が生み出す魔力のような「何か」を彼は本気で感じているのだった。
「言いたく、無いの……?」
 香具弥は彼の顔を覗き込んだ。
「すみません……」
 恒峨が泣きそうな顔をしていたので、香具弥はそれ以上何も言えなくなってしまった。

 聞く事が無くなってしまった香具弥は、そのまま恒峨の細くて綺麗な銀髪をいじり始める。
「やめてください――、姫」
 青年は少し慌てたように、顔を赤らめるとその手から髪をすり抜く。そして決意したように香具弥の方を見ると唐突に尋ねてきた。

「姫には、好いた方が居ますか?」

「はあ??」
 突然の質問に、香具弥は間抜けな声を上げた。
 ――第一そんな人が居れば、四人に告白された時に上手い断り方が出来たはずだ。そう思った彼女は首を傾げて答える。
「よく、わかんないけど、居ない……かな?」
 恒峨はその言葉に、安堵のため息をついた。

「ならばあと二度月が満ちるまで、誰とも恋をしない事です」
「さっきもそんな事言ってたけど、やっぱ誰かと恋人になっちゃうと、汚れたとか言って月に行けなくなっちゃうの?」
 半分冗談で言った事だが、恒峨は強い眼差しで香具弥を睨んだ。聞いただけじゃん、と香具弥は首を竦める。
「そうならないように姫の保護者であるあの野蛮人に、求婚者達から姫を守るように申しつけたのに、一体何を……」
 その時、ぶつぶつ言う恒峨の後ろにぬっ、と人影が立った。

「……誰もテメエに命令された覚えはねえがな」
 出たな、無礼者め、と声だけで相手が分かった恒峨は、背後に現れた竹流をゆっくりと振り返る。

 それを全く無視すると、寄り合いが終わり一度家に戻った竹流は、香具弥にまた拳骨をお見舞いしながら、夜遅く出て行ったことに小言を喰らわせていた。彼女はそれにまた頭を押さえながら、彼に言った。
「ねえ、私は恋しちゃいけないんだって」
「は? なんで、んなコトまで命令されなきゃいけねえんだよ、くだらねえ」
 誰が言ったかなど、竹流にも容易に想像がついた。彼はぎろりと恒峨を睨み、恒峨もお前に何が分かると負けじと睨み返す。

 ――こんな暗がりでニ人で何してやがった。
 ――姫を保護するどころか、束縛しているのではないか。

 その二人の青年の睨み合いは、四人の少年達とはまた違う、寧ろそれよりも冷たく激しい炎のぶつかり合いのように、香具弥は感じた。
 ――何だかなあ、ニ人とも……。
 何故二人の仲が悪いのか分かっていない香具弥は、犬猿の仲である二人に呆れる気持ちすら感じていたが、竹流は彼女を「帰るぞ」と促した。去り際に、やっぱりコイツ、気に入らねえ……と再び恒峨と視線をぶつからせて。


 ――聞かなくても、
 ――言わなくても、

 分かるような気がした。

 「五人目」は――、


 香具弥はそこでふと思う。

 ――あれ? そう言えば五人目の求婚者って、まだ現れてないけど、一体、だれ……?


 ――「お前」だ……!


>>ACT13へ
>>目次へ(ランキングへの投票はこちらから)

サイトTOPへ
 
スポンサーサイト












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://hekirakunokazamidori.blog106.fc2.com/tb.php/115-de3546cc

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。