碧落の砂時計 月姫異聞―ACT18 片想い―

碧落の砂時計

オリジナル恋愛小説の作品紹介+更新情報+お話置き場。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
 夜空に浮かぶ上弦の月。あと二回あの月が満ちた時、本当に香具弥は月に還るのだろうか?

 ――自分は月姫本人で、罪人とされて。その子供の子孫の子孫の……が、今自分なんかに言い寄る彼らだというのだ。
 香具弥はそう思いながら、今までどおり一緒に登校する火衣の横顔を不思議そうな表情で見た。
「……何だよ」
 それに気づいた火衣も不思議そうな顔をした。
「んーん」
 香具弥は首を横に振る。変な奴、と火衣は軽く首を傾げる。

 ――自分なんかを好きだと言ってくれた彼らは、自分が月姫で罪を犯したと知ったら、どんな風に思うだろうか。
 それに彼らが自分を想う気持ちは月姫を慕う潜在的な気持ちからで、自分が「香具弥」である事は関係ないのではないか。
 香具弥はぼんやりとそう思っていた。

 そんな事は言えず少女は火衣から目を逸らすと、ただ空を見上げた。


 学校が違う火衣と香具弥は、通学途中の交差点で別れる事になる。
 ぼーっと歩いていく香具弥の後ろ姿を見送った後、何か思い悩んでいそうな様子はあるのに自分には何も言ってくれない彼女に対し、複雑な溜息をつきながら火衣が踵を返すと、
「最近、何か変ですよねー」
「天野先輩……心配です……」
突然現れた双子の龍と燕にそれ以上に驚かされた。

「何なんだよ! いきなりっ」
「今朝はちょっと出遅れましたー」
「ま、部活のない俺達には帰り道がありますけどねっ」
 ――同じように香具弥を心配しているとはいえ、何故こいつらと仲よさそうに登校せねばならないのか……。
 火衣の通う高校と双子の通う(香具弥や火衣の母校でもある)中学校が同じ方向にあるため、そこからは苦悩する火衣を挟み、香具弥の様子がおかしい原因について論議する龍と燕と三人で仲良く登校する羽目になってしまった。

 そのうえ、
「あ! あれは」
「天野先輩の家のおぢさんっ」
双子は火衣の天敵――竹流までも見つけ、嫌そうにしかめ面をした彼の心も知らず、香具弥の事を尋ねようと竹流を呼び止め爽やかに朝の挨拶をする。

 仕入先に出かける途中だった竹流は、煙草を口に加えたまま見覚えのある少年達に「どーも」と会釈した。
「「ご機嫌麗わしゅうございます、天野様」」
 香具弥情報を手に入れる為なら自分も捨てる双子は、ホスト並の歓迎ぶり。呆れて何も言えない火衣だが、竹流と二人の会話にはしっかりと聞き耳をしっかり立てている。

 竹流の二本目の煙草に龍が火を点け、何処から取り出したのか燕が灰皿を用意する。「そらどーも」と再び言いながら煙を吐き出した竹流は、
「で? 香具弥の何が知りたいワケ? 肉体的な事は教えねえよ」
と、一応少年達が遅刻しないように、単刀直入に用件を切り出してやった。

「あ、それは自分で確かめますから……ってそれよりも。最近、何か」
「香具弥さんがお悩みのようで。――学校の事でもなさそうなのですが」
「「だから心配で心配で、僕達夜も眠れず……」」
 涙ながらに訴える双子と不機嫌ながら同じことが気になるらしい火衣を、竹流は「ふーん」と頷きそれぞれに視線を送ったが、
「お前さん方を頼りたきゃ、あいつから話すだろ」
と素っ気なく言った。しかしそれでは少々彼らが可哀相だとも思ったので、

「俺にも何も言わねえんだから」

そう、自嘲気味に笑った。


 ――それは、ある意味事実だった。

 立ち聞きしなければ恒峨から聞いたあの話も自分にはしなかっただろうし、その後の「怒ってる?」と訊いてきた時の気持ちだって……香具弥は自分には、何も話しはしないのだ。

 苦笑した竹流の脳裏には、自分に何か言いたげにしながらも口を閉ざし、無理に笑顔を浮かべる最近の香具弥の姿が思い出されていた。


>>ACT19へ
>>目次へ(ランキングへの投票はこちらから)

サイトTOPへ
 
スポンサーサイト












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://hekirakunokazamidori.blog106.fc2.com/tb.php/131-3ff32b00

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。