碧落の砂時計 月姫異聞―ACT19 一触即発―

碧落の砂時計

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 香具弥をめぐり、朝の短い時間での牽制が始まっていた。
「じゃあ香具弥先輩は、天野様にすら何もお話していない……?」
「まあ確かに父親みたいな人に、高校生の女の子がそんな打ち明け話はしないですよね……」
 龍と燕はそれぞれ顎に手を当てて、竹流の意味を言葉を考える。
 火衣はこの変人たちと関わり合いを持ちたくないと思いながらも、つい会話には耳を傾けてしまっていたが思わず燕の台詞にぴくりと反応した。

 竹流は煙草の煙を吐き出すと、再び口を開いた。すかさず、龍が再び灰皿を差し出す。
「そりゃあいつの生活環境の変化は、おたくらよりはわかるけど」
 ――月の使者の出現の事にしろ。
「そこであいつ自身、何を感じたかは、誰にもわからんよ」
 ――打ち明けてもらうか、察するか。思い出すのは「怒ってる?」と自分に問いかけた時のあの顔……。
 竹流は煙草の煙を深いため息と共に吐き出した。

「ま、生活環境についてはプライベートの侵害になるから教えられねえが、」
 しかしそこでいつものようににんまりと笑う竹流に、双子のブーイング。結構、仲の良い三人だろうか。
「そういう話までしてもらえるくらい、あいつの中での自分の地位をあげるんだな」
 冗談ぽく言った竹流の言葉に頷く双子。彼はそれで話を締めようとしたが、
「何が父親だ……」
火衣の不機嫌そうな声に、男三人は揃って火衣を見(下ろし)た。

「なんだ、居たのか火衣坊」
 竹流の視界にも入っていたであろうに、さも今会ったかの如く言う態度が火衣にはやはり気に入らない。そしてそれを解っていながら、あえて彼に興味なさそうな言い方をする竹流。――あ、やっぱり始まった、と顔を見合わせる龍と燕。
 このヤロウ……と腹が立ってくる火衣だが、それ以上に苛立つ事を言わないわけにいかなかった。
「あんただって香具弥に本心話してもらえないことが、もどかしいくせにさっ」
 竹流は改めてゆっくりと火衣を見た。火衣は竹流を睨んだ。
「それは父親の感傷だとか、そんなんじゃねーだろっ!」
 火衣が「そう」確信するのは子どもの頃からいつも香具弥に近づく自分を彼が大人げなくからかい、意地悪してきたからであり――。

 それを聞いた竹流は双子の間を抜け、火衣の前へとずいっと立った。
「火衣坊……」
 その鋭い眼光に少々畏怖を感じながらも、火衣は負けじと睨み上げる。

「――学校、いいのか?」

 しかし竹流が真面目な顔で発した、その間の抜けた台詞に、
「そうですよ! 阿部先輩っ」
「遅刻しますよ!」
と意外と真面目な双子に引っ張られ、最大のライバルと一触即発であった火衣は学校へと連行される羽目になってしまった。
「ちょ、ちょっと待て! 話は……」
「ちゃんと勉強しろよー、青少年」
 竹流はひらひらと手を振って、呑気にそれを見送る。
「てめ……っ、あいつに頼って欲しいのはお互い様だろ! 香具弥に手え出したら承知しねーからなっ! 変態親父ー!!」
 火衣の最後の遠吠えも空しく、若い学生たちは学び舎へと向かっていった。


 三人の少年を笑顔で見送った後……竹流はやけにけだるそうな顔になると、仕入先へとのっそり足を向けた。

 ――子供だと思っていたが……。火衣が意外にも昔から冷静に自分を見ていた事に少し驚いていたのだ。
 それが見当どおりか、そうでないかは別として……。


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