碧落の砂時計 月姫異聞―ACT20 一触即発2―

碧落の砂時計

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 血は繋がらないが自分の保護下にある香具弥が、夢の骨董商になるためにも――たとえその夢が変わることがあっても、せめて人並みに学問を修めて夢が見られるようにいさせてやりたい。
 いい加減で放蕩ぶりが甚だしい竹流だが、それだけは思ってそれなりに毎日働いている。

 今日は自店の天野屋で販売している駄菓子と携帯電話と不動産の仕入先――といっても大きな会社相手ではなく、昔つるんでいた仲間などとの個人取引で、彼らもまた何処からその物件を手に入れているのかあやしいものだが――に出向き、品物を見たりご機嫌伺いをしたりに行くところであった。
 だが店をあまり遅く開ける訳にもいかず、そう道草も食ってはいられない。だから朝早く家を出たのであるが、その途中で出会った少年たちはからかうと面白いので、つい立ち話をしてしまった。

 それにしても最近の火衣の切り込みは……などと、先程のやりとりをぼんやりと思い出しながら歩いていた竹流であったが、すぐにそんな悠長な事も言っていられなくなった。
 なんと行く先行く先の仕入先の仲間達が、こぞってある会社から天野屋との取引を大金と引替に交代するよう持ちかけられたというのだ。しかもそれを持ちかけてきたのは、皆同じ大会社からであり……。
「イシダコンツェルン~?」
 経済界で名を馳せているやらなんとやら。少なくとも、この小さな町の小さなさびれた店に目をつけ提携したいと言うとは思えない。儲けも欲しいが、悪びれてた時代からつきあってた仲間との繋がりは金額に換算出来ないと商売仲間達は断ってくれ、竹流自身もそんな権力におもねる気は断じてない。

 そこで竹流はどういう目的があるのかと、イシダコンツェルン本部へ直接電話した。専務だとかいう者に話を通され言われた言葉は、

「次期総帥、御行様の仰せです」


「――!? ふっざけるな!」

 そして事の顛末を聞き出した竹流は、一喝すると自宅の黒電話の受話器を力一杯叩きつけたのであった。


 舞台は変わって、香具弥の通う高校にて……。
 袴姿の少年たちが放課後の部活動を行う剣道場では、切れ長の目の少年?石田御行が、妙なチンピラに「石田を呼んでこい!」とどやされ、びくびくしている一年生男子の肩に手を置き、落ち着いた足取りで入口へと向かうところであった。
 そのチンピラはさすがに校舎内での喫煙は控えていたが、どのように学校内へと侵入したのか、入口にどっかり座っていた。
 おそらく御行を探すまでにも、多くの生徒を脅かしてきたに違いない。御行はその男――竹流の横に静かに座った。

「やっぱりあんたか……」
 以前見た要注意人物のうちの一人の顔に、竹流は大きく溜息をついた。
「一体どういうつもりだか……とにかく、この話は無しだ。ウチの商売にまで口を出すな、以上」
「やはり……」
「解ってんなら最初からこんな事すんなよなー。『あいつ』が喜ぶどころか怒るの解ってんだろ?」
「……」

 ――そんなのは百も承知だ。
 御行はその言葉を飲み込み、感情を殺した顔で静かに立ち上がった。

「貴方には、解りませんよ」
 ――昔から血が繋がらなくとも家族であったという事実、それだけで特別になれるということ。その特権がこの男にだけあること、それにより彼女が彼を特別に思っているであろうこと。その全てが。

「へえ……意外だなあ」
 商売の邪魔をした分の礼だとばかりに、竹流は御行に向け口を歪めて笑った。
「そんなに自信ねえのか?」
 瞬間、御行は手元に置いた竹刀を掴むと竹流の眼前に突きつけた。そして身じろぎもしない相手に向かって、
「――俺と、勝負しませんか?」
低い声と鋭い眼差で告げたのであった。

 竹流はそれを逸らすことなく見返した。


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