碧落の砂時計 月姫異聞―ACT21 初めての喧嘩―

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 いくら彼にとって好きな奴の親――みたいなものだからといって、その商売まで面倒みようなど御免こうむると、お金持ちの坊である石田御行に説教をたれに行った竹流であったが、逆に勝負を挑まれる羽目になった。

 ――火衣といい、コイツといい、なんで俺を眼の敵にするかね。年の近い自分らの方が、よっぽど分がいいだろうに……。

 御行の心中の複雑な敵対心は理解出来ずに、竹流は自分に向けられた竹刀の先を掌でぐっと握った。
「勝負……? 一体、何のだよ」
「お姫様を賭けた勝負、とでも言いますか?」
「くだらねえ」
 竹流は竹刀を左に払った。
「だから何で俺なんだよ。俺をメッタ打ちにして、誰より優位に立ちたい訳か?」
 竹流は立ち上がると御行と目線の高さを同じにし、顔を近づける。

「剣道で勝負しろっつうんならまずルールが分からんが……どんな手を使ってもいい、ルール無しの『喧嘩』ならやってもいいぜ。……ただし、」
 竹流は柔剣道場の中を顎でしゃくった。
「此処で騒ぎ起こすなんて事は、あいつの保護者である以上出来ねえから、」
 御行の背後では、部員達が先生を呼ぶかどうしようかひそひそ話し合っている。
「だからそうしたきゃお前さんが身一つで天野屋に来な。何時でも相手になってやるよ。――あ、高級車横付けだけは勘弁な」
 そう言うと竹流は、御行の眼をしっかりと押さえつけるように見据えて――笑った。

「腕相撲くらいなら、今やってもいいけどさ」
 いくら生徒の保護者といえども、これ以上の騒ぎは、香具弥の立場を悪くしかねない。
 仕事の件は話がついたと思った竹流は最後に冗談染みた口調でそう言うと、御行の肩に手を置き剣道場を後にした。

「――」
 ――確かにあんな親父とやり合ったり、社会的抹殺を謀ったところで、何にもなりはしない――が……。
「一番、厄介な位置なんだよ……」
 御行は小さな声で呟いた。

 二人の会話が聞き取れなかった背後の部員達は、石田会長がチンピラを追い払ったとして歓声を上げていた……。


 そして竹流がすぐ近くの小さな校門から外へと出ようとすると、
「タケちゃん!?」
偶然にも帰る途中であったか見つかりたくなかった香具弥の声に、彼は咥えた煙草に火を点けようとした手を止めた。

「どうしたの?」
 香具弥は竹流を心配そうに見上げた。
 月の一件で少し神経質になっている香具弥が、思わず少し可哀相で彼は眼鏡の奥の眼を細めて言った。
「何でもねえよ。……店の取引の件で、ちょっとな」
「学校指定ジャージの関係?」
「そーそー」
 しかし歩き出した竹流の背中に、突如、香具弥の鋭い声がした。

「嘘だ!」

 竹流は足を止めた。
「タケちゃんは、私に何も大事なこと言ってくれないんだからっ」
 珍しく拗ねたような香具弥の声に竹流が驚いて振り向くと、彼女は彼にべーと舌を出し、タケちゃんのばか!とでも言いそうな表情をして、逆方向に走り去った。
 後には、呆然とした竹流が残される――。

「何だってえ……?」

 ――二人して何、同じ事言ってんだ? 俺らは……?


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