碧落の砂時計 月姫異聞―ACT23 思春期―

碧落の砂時計

オリジナル恋愛小説の作品紹介+更新情報+お話置き場。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
 自分には本当の顔を見せていない――と親代わりの竹流に対し、ここ最近の出来事に不安定になっていたからか、突如として反抗的になった香具弥は、
「かんけーないじゃんっ」
と、竹流の咎めるような言い方が更に気に入らず、つい子供のように拗ねた答え方をしてしまった。

 思わず駆け込んだ恒峨の所が居心地いいのか?と竹流に改めて訊かれると、確かになんだかんだ言って此処によく来ている自分に彼女は気付く。
 それは同じ月の者だという安心感からか、公園の土管という場所が元々好きだからか、はたまた違う理由か――香具弥自身も分からないが、竹流にそういった態度をとるのは恒峨の傍が心地よいというよりは、売り言葉に買い言葉となっているだけであるという自覚はあった。

 竹流は竹流で、何故香具弥が急にそんなことを言うのかが解らない。
 ただそんな普通でない状態の彼女が、彼女の故郷だとかいう月から来た恒峨を一番に頼ったのが気に入らなかった。それならまだ幼馴染の火衣や口八丁の双子や、生意気な御曹司に頼ってくれた方がましだと彼は思ったのであった。
「あー、そーかい」
 よって竹流も低次元な常套句を吐くと、そのままあっさりと香具弥を残して公園を後にした。

 夕暮れの公園には益々ふてくされた表情になった香具弥と、呆気にとられる恒峨が残される。
「いいんですか……?」
 仲がよかった筈の二人の突然の喧嘩を目にして、恒峨は既に見えなくなった竹流の背中と香具弥を見比べ尋ねた。
「しらないよっ」
 しかし彼女から返ってきた答えはまたもや子供のようなもの……。それもその筈、香具弥自身、自分の気持ちが良く解っていないのだから。
 だが心配そうな恒峨の視線に気付き、こんな事ではいけないと、
「大丈夫だよ」
彼女は無理矢理笑顔を作って土管から降りる。そして「急にごめんね」、と彼に手を振り家に帰ろうとした。

 そんな香具弥を呆然と見ていた恒峨であったが――彼にはその時、見たこともない月姫の姿が少女の上に重なって見えた。
「姫!」
 突然呼び止めてきた恒峨の真剣な声に、香具弥は驚いて振り返る。
「本当に、月行きの汽車に乗ってくださるんですよね……」
 先ほどの自分の発言を思い出した香具弥は、恒峨の様子がいつもと少し違うことが気にはなったものの、「考えとくね」と苦笑して言うと、今度こそ公園から立ち去っていった。

 ――何を、ためらっている? 強い絆で結ばれていた二人の仲違い。これはチャンスではないか?

 一人残された恒峨の中で、誰かが囁く。
 五人目の求婚者は、表にそれを出す事無く、静かにその想いを燃やす――彼の心で囁いた声は既に亡くなった、月姫を想う曽祖父・瀞峨の声か、それとも……。

 その夜、天野屋にて。つつましやかでも幸せだった生活をしていた香具弥と竹流であったが、夕食もその後の時間もどこかよそよそしく、口も殆どきかなかったことは言うまでもない。


 ・・・・・・・・・・


 そして学校は夏休みを迎えた。高校が違う火衣と香具弥が毎日会うことはないものの、学校へ行く用事があり時間が重なれば一緒に登校することもあった。これはもちろん、火衣が香具弥の予定に合わせているということもあったが。
 さてそんな片想い中の火衣が幼い頃から知る限り、香具弥は少し変わっているが落ち着いた女の子だ。それがこの数週間、沈んでいたり考え事をしていたりとやけに情緒不安定で様子がおかしい。

 ――今もそうだ。隣でいつものように明るく話をする香具弥に火衣が覚える明らかな違和感。その理由は……。
「おい、香具弥さあ……お前、最近変じゃねえ?」
「え? どこが?」
「……最近、あのムカつくクソ親父の話、全然しねえじゃん」

 香具弥が竹流の話をしなくなった――そう、それこそが火衣が香具弥に抱く何よりの違和感であった。思いもよらなかった指摘に香具弥は驚いて、唇を噛む火衣を見つめる。
「もちろん聞きたくもねえよ! おれ、アイツ大っ嫌いだかんな」
「――私、そんなによくタケちゃんの話してた?」
 香具弥の意外そうな問いに、火衣は不機嫌な顔のまま頷いた。


>>ACT24へ
>>目次へ(ランキングへの投票はこちらから)

サイトTOPへ
 
スポンサーサイト












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://hekirakunokazamidori.blog106.fc2.com/tb.php/142-6640b55a

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。