碧落の砂時計 月姫異聞―ACT25 初デート―

碧落の砂時計

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「ねえ、天野先輩~、夏の終わりの思い出に」
「どっか行きましょうよー。俺たち夏休みのバイト代ありますし」
 双子の中学生、龍と燕からの突然の提案に、香具弥はぽかんとして二人を見比べた。
 月からの使者だという恒峨の突然の出現により混乱に陥り、何故自分が月姫と呼ばれるのかを知った後は、竹流にとっての自分の存在について悩み始めてしまった彼女。
 詳しい内容までは分からなくとも香具弥をずっと見ていた彼らには、彼女の様子が今までになくおかしいことは一目瞭然であり、それを少しでも紛らわせようとしての提案であった。龍と燕の性格なら、それくらいしそうなことは香具弥にも分かる。

 そうは言っても男に興味のない彼女のこと、誘っても断られるだろうなと半分諦めていた双子であったが……、
「んー、いいかもねー」
意外な返事に、彼らの方が顔を見合わせて驚いてしまった。


「「とりあえず」」
 そして二人が頷き合って向かった先は――。


「――あ?」
「だから天野先輩を」
「一日お誘いしましたよって」
 その結果を火衣に報告にあがる龍と燕。

 火衣は眉間に皺を寄せて訝しげに二人を見上げた。
「あいつがいいって言ったんだろ?」
「言いましたけど、阿部先輩とは正々堂々と戦いたいですし、それに何というか……今回は、天野先輩に元気になっていただきたいからお誘いしただけのことで」
「付き合うとか変なことしたいとかって目的じゃないんですが(それも狙ってないわけじゃないけど)、今の天野先輩は、俺たちだからOKしたって訳でもないような……」
 燕の言葉に火衣は、ぴくりと眉を上げた。
 付き合うつもりもない男にあっさりと従う香具弥の態度に腹が立たないわけでもないが、その不可解な行動から、余程自分たちに言えない「何か」が彼女の中で起こっているのだろうと火衣にも察せられる。
 そしてここまで振り回されても、まだ彼女を気にせずにはいられない少年たち。それは月姫に魅せられた求婚者たちの宿命なのか……。


 一方、その頃天野屋では。
「ね、ねえ……」
 「タケちゃん」とあれから呼び辛くなり、レジに座る竹流にたどたどしく声を掛ける香具弥。
「明日、友達と遊びいってくるね」
「ふーん」
 竹流は店頭に置いてあった四流週刊誌を見るともなしに捲っていた。
「男と行くの?」
 香具弥の態度からそう悟ったか、彼は彼女の方を見ないまま尋ねた。
「うん……」
「――あっそ」
 その後は薄いページを捲る音だけが香具弥の耳に聞こえた。それだけだった。今までを思うと、とても呆気ない反応にそれをどこか残念に思う香具弥が存在した。
 「本当に月に行く事になったら、仲良くしてくれた彼らにもう会えなくなるから行くだけだよ」と言おうとしたが、心配もしてくれない竹流の様子と、それは暗に竹流との別れも意味する発言から、それすらもあっさり「あ、そう」と言われてしまいそうなのが恐くて、香具弥は口を噤んだ。


 そして双子が首尾よく香具弥と初デートと相成った当日……。

 先日の態度からどうせそんなことだろうとは思っていたが、香具弥に近付こうとする自分を子どもの頃から邪魔し続けて来た「あいつ」が、今回は相手が二人がかりだと言うのに邪魔に入らない、というのが火衣には気にいらなかった。
 香具弥を誰にも渡したくないならそうすればいいのに、香具弥と何があったかは知らないが、今回ばかりはそうしない竹流に火衣は腹が立っていた。

 だから彼は双子と香具弥の行き先と「香具弥、貞操の危機」と書いた紙切れを天野屋に放り込むと……彼もやはり気になるので、そのデート現場へと急行したのであった。


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