碧落の砂時計 月姫異聞―ACT26 遊園地だよ!全員集合―

碧落の砂時計

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 ――というわけで、双子の龍と燕は元気のない香具弥を慰めるため、香具弥はもしかしたらもうすぐ双子にも会えなくなるからという気持ちから、三人が夏の終わりにやって来たのは隣県のアミューズメントパーク。
 世界一、二の最速を誇るという絶叫マシンのある遊園地から水族館、動物園までが揃った施設だ。

「では、早速参りますか」
「乗り物系は龍と俺と、交互に乗りましょうね」
 双子の軽快な会話のリズムは大したものである。お陰で待ち時間も退屈することがない。
 二人は将来、さぞ有能なホストになるであろうと思う香具弥であった。

 端から見れば逆ハーレム、別の立場から見れば、それはそれは仲のよさそうな恋人同士にも見える三人。
 その光景を離れた場所から見ていた火衣は、手にしたスチール缶をぐしゃりと握り潰した。
 双子なりに落ち込んでいた香具弥を思いやっていることは分かるし、自分は照れて到底そんな風には誘えない。しかし二人がかりで、奴等がいつ変な気になるか分からない。
 そう思い、そんな想像ばかりをしてしまう自分に、俺って欲求不満なのかなと彼がふと空しく思うと……、

ぐわっしゃん!ばりばり!!と背後で先程のスチール缶よりももっと無惨な音がした。火衣が驚いて振り向くとそこには、
「何してんの? お前さん」
と煙草を咥えながら、素知らぬ顔で飄々と尋ねてくる竹流が立っていた。

 それはこっちの台詞だ!と火衣は叫ぼうとしたが、竹流の足下で粉々になっているスチール缶を見て思わず言葉を失った。
「――結局来てんじゃねえか」
 そしてぼそりと呟くと、
「火衣坊が暴走しないか不安でねえ」
と、竹流にまた頭を撫でられる。
「俺の所為かよっ!」
 欲求不満はどっちだ!と続けて叫ぼうとした火衣だが、香具弥たちに気付かれないため渋々黙った。

「でもさあ、こんなトコに野郎一人でいるのも二人でいるのも、気持ち悪いよなあ」
 火衣の怒りも無視して呑気な事を言う竹流だったが、そんな二人の目の前に、
「では私が女装でもしましょうかっ!?」
と突然銀髪の美青年が飛び出して来たので、思わず二人はのけぞった。

「……空から見張りとか出来ねえのかよ」
 まさか恒峨が火衣の前に姿を現すとは思わず、竹流は突然現れた青年の首に腕を回して耳元で文句を言うが、
「貴方が求婚者から姫を守ることを怠ったからでしょうがっ」
恒峨も負けずに小声で怒ると竹流を睨む。竹流はひとつ舌打ちすると、その手を放した。
 何やら常人離れした風貌の美青年を火衣は訝し気に見るが、最近の香具弥の元気のなさはもしかしたらこいつが原因か……?とふと勘が働き、一体誰だと竹流と恒峨を交互に睨む。

「第一、女役っててめえそのケがあんのか?」
 元々仲の良くない二人。竹流は益々不審そうに恒峨を見るが、
「姫を放っておく不甲斐ない貴方に代わって、捨て身でお守りするんですっ!」
彼は再び嫌味を添えて言い返す。
 事情はよく分からないが不毛な応酬には付き合っていられない、そう考えた火衣はとりあえず香具弥たちを追おうとした。

 ――すると、

「男三人で遊園地にいても、見苦しくない服装があるぞ」

更に第三者の声が降って来た。
「! てめ……っ」
 火衣が振り仰いだそこには、大人びた長身の少年――石田御行が立っていた。
 こいつも来たのかよ……と体を震わす火衣、求婚者の顔は分かっているので特に驚くこともない恒峨、そして、
「そう言えば、ここはイシダコンツェルンの経営だったっけか……」
と苦々しそうに新しい煙草に火を点ける竹流。
 御行の方もいつぞやの竹流との一触即発を思い出していたが、みっともないのは自分だけではなかったな、と呆れたような安心したような眼で、一人の少女に狂わされている男共を見やった。

「――というわけで尾行に最適な格好だろう」
 御行の親切?な計らいにより、尾行三人組はそのパークのアルバイト用の作業服に身を包む事となった。
「てめえはいいのかよ……」
 親切なのか馬鹿にされているのか、分からなくなってきた火衣が御行を睨むと、
「俺は管理室でパーク内の全てをカメラで監視する事が出来るからな」
彼は何とも勝ち誇ったように微笑む。
 竹流は竹流であの時の仕返しなのか、してやられたなと思ったが香具弥に気付かれないためにも、このまま乗せられてやることにした。


 ・・・・・・・・・・


「ところで、アイツは何なんだよ……」

 それからアルバイトらしく見えるよう振る舞おうと真面目に掃除をする火衣は、香具弥たちに鋭い視線を向ける恒峨を横目で見ながら、アルバイトにはどうしても見えない態度で煙草をふかしている竹流に小声で尋ねた。
「んー? ……あんまり関わり合いになりたくねえ奴だな」
「答えになってねーよ……」
「だからさ、香具弥があいつと今後関わりを持つようだったら、いずれお前さんに話すだろうよ、ってコト」
 香具弥にとって火衣は大切な友達だ。恒峨と共に月に行くことになれば、さよならくらいは言うだろう。竹流はそう思っていた。

「――あんたには?」
 竹流が顔を上げると、火衣が真っ直ぐに彼を見据えていた。

 ―― 一瞬、答えが出なかった。
 さよならすら言ってもらえないことだって、考えられなくはない。自分に本心を剥き出しにしない、あの子なら……。

 火衣の質問がまた核心に触れてしまい、二人が黙った時――、

「あああ~! あの無礼者めが~」
その諸悪の根源である恒峨が悲痛な声を上げたので、火衣と竹流は香具弥たちの方を振り向いた。
 するとなんと双子が急に香具弥の手を両方から引き、三人とは逆方向に走り出したではないか。
「あいっ、つら……!」
 火衣が呻いた時にはもう遅く、三人の姿は見る間に人込みに消えていった。

「ど、どうしたの?」
 突然の行動に香具弥は驚いて双子を見た。
「いや、ちょっと……」
「次のに早く並びたくて」
 香具弥の頭上で、龍と燕は顔を見合わせて笑った。

「気付かれたか……」
 悔しそうに呟く火衣。
「香具弥は気付いてねえみたいだけどな」
 気付いたなら、彼女はまず自分たちの方に来るだろう。双子に対して後輩以上の感情がなければ。
 そう思った竹流は、更に呑気に煙草をふかしてのんびりと言う。
「盛りのついた中学生……今度こそ『貞操の危機』かなあ」

「「呑気な事言って 

 んじゃねえよ!」
 ないでください!」

 火衣と恒峨は同時にさう叫ぶと、何のために来ているのかよく分からない竹流を二人で踏み潰し、慌てて香具弥と双子を追い始めた。


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