碧落の砂時計 月姫異聞―ACT28 分かり合いたい人―

碧落の砂時計

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 香具弥は最後に誰を選ぶのか。選択肢は四人の求婚者、月に帰ると言うならば月の使者・恒峨。そして……。
 月姫が罪を許され幼い少女として再びこの世に蘇った、それをずっと見守り共に過ごし続けてきた青年は、その選択肢から辞退するというのか。

 御行は頭をがしがしと掻いている竹流を見上げた。


 ・・・・・・・・・・


 その頃、火衣と恒峨といえば。

 超高速ジェットコースターで恐怖に慄き、水上ボートに乗り損ね池に落ち、お化け屋敷が初めてという恒峨が半狂乱になるのを火衣が必死に押さえ、その割には双子たちには何もダメージを与えられず、二人はまるで雑巾の如くズタボロになっていた……。
「あああ~、今度はあのようなものに……」
「か、観覧車かよ~。ベタな……」
 そろそろ日も傾く頃。二人が辿り着いた時には、既に香具弥たち三人は観覧車へ乗っており、上昇していくところであった。

 双子たちがこの乗り物に香具弥を乗せた意図。それは動く密室で夕日でも見つつ、あわよくば両側から二人で香具弥を――?
「さっせるかああ!!」
 勝手に想像して怒りを爆発させた火衣は観覧車によじ登ろうとするが、今度こそ監視員に取り押さえられてしまう。
「姫様ぁ~~」
 後ろから恒峨の情けない声が、空に昇って消えた。

 その頃、観覧車の中では……。
「ちょろいもんだね」
「何が?」
「何でもないですよ、天野先輩♪」
 何も無理に片側の席に三人で腰掛けなくてもいいだろうに……と思う香具弥。少し傾いた観覧車の中、龍と燕に挟まれてちょこんと座っていた。

 観覧車が動き出してから少ししたところで、不意に龍が呟いた。
「大丈夫ですか? 最近……」
「え?」
「何か、悩まれてるんでしょう? ここなら誰も聴いてないんだから、吐き出したらどうですか?」
 燕からもそう言われ、香具弥は真面目なトーンの声になった双子を、首を両方に動かして驚いたように見比べた。

「どーせ、誰にも話してないんでしょう? あのオジサンにすら」
「無理に話してくださいとは言いませんけど、俺たちも阿部先輩も、あのお金持ちのお兄さんも保護者のオジサンも――皆、天野先輩が心配なんです」
「だから先輩が思っている以上に、望むと望まざるに関わらず」
「周りの人間は、先輩を大切に思っていますよ」

 中学生に諭されてしまった香具弥は、ある種確立された考え方を持っている双子を目を丸くして見ると、反対に尋ねた。
「私って、そんなに悩んでるように見える?」
「そりゃあもう」
「だからと言って、悩んでないふりをしろと言う事ではないですよ?」
「誰か――本当に、大事な人になら、自分を少しくらい、曝け出したっていいじゃないですか」
「それぐらいしないと、その人とも分かり合えないですし」
「本当にお互いを大切にし合ったり、愛し合ったりする事も、出来ないんじゃないでしょうか……?」

 二人の言葉を聞いて、香具弥ははっと顔を上げた。
 自分でもよく分からなかった違和感や、苛立ち――それはこの言葉のことではないか?と。

 香具弥には本当に、「分かり合いたい人」がいたのだ。
 どんな時でも苦楽を共にしてきた「彼」と、ただ一緒に暮らすだけじゃなくて、本当の意味で心を分かち合いたいと思った――。

「だから天野先輩が、伝えたいと思った方に」
「それを、伝えてあげてください」
 もちろん、それが自分たちであって欲しいというのが、この双子の願いなのだが……。
 その男心を知ってか知らずか、たった一人の男の顔をはっきりと思い浮かべた香具弥は大きく頷いた。
「うん、分かった! 龍も燕も、ありがとう」
 そして香具弥は久し振りに心からにっこりと笑うと、両側にいる双子を見上げた。
 その笑顔に、くーっと込み上げるものがあった龍と燕、思わず両側から年上の少女に手を伸ばし――かけたが、無情にも観覧車は地上へ到達したところであった。


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