碧落の砂時計 青竹迷風―第3話 欲望(前編)―

碧落の砂時計

オリジナル恋愛小説の作品紹介+更新情報+お話置き場。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
 公園の隅で木と倉庫の影に隠れるように。
 こんな昼間から、誰かに見えているのではないかと心配しながら。

 それでも止めることが出来ないというように、汗ばんだ肌を寄せ合ってしまう二人。

「お、怒ってる……?」
 彼女から誘ったという負い目があるのか、清矢郎の腕の中のあさぎは心配そうに尋ねてきた。
「怒って、ねえよ」
 細い、女の子独特の柔らかい身体の感触が嫌でも伝わる。欲望に飲み込まれないように、必死で自分を抑えながら清矢郎は低く、呟いた。

 この彼が自身を抑える時の無表情と声色が、彼女に「怒っているのか」と思わせる所以なのだが、切羽詰まっている少年は自分では気付かない。あさぎが何故怯えるのか分からず、彼もまた心配になっているほどである。

 しかし先程からそうして何度も尋ねられるので、怒っていない、の証明に彼は少女を強く抱いてみた。
 びくん、とあさぎの身体が震え、清矢郎のTシャツをぎゅっと掴む。二人の身長差は二十センチほどあるので、清矢郎にしてみればあさぎは壊れそうなほど華奢に感じてしまう。
 しかし苦しげであったがあの行為で自分を最後まで受け入れられたということは、子供を産むということからしても、女性というものは丈夫に出来ているものなのだな、と少年はそんなことに内心、感服していた。

 女の子特有の甘い匂いが、清矢郎の鼻腔をくすぐる。生理中だと言われたからか、何か鼻につくような、独特の匂いもよくよく嗅ぎ分ければ感じ取れるような気もしたが、彼はそれすらも「あさぎ」として丸ごと感じ入っていた。
 ……やはり自分は、相当おかしくなっているのだろうか、と思いながら。

 このまま寄り添っているだけでも十分幸せなのだが、意外と人の通りがなく気が大きくなってきたのか緊張が解け、無意識のうちにその手を動かしてしまう。
 さらりとした黒髪と、柔らかい頬に、これくらいならよいだろうと触れてみる。

「ん……」
 くすぐったいのか、まさか感じたのか、あさぎが鼻に掛かった声を出し、また身体をぴくりと反応させた。清矢郎が見下ろしたあさぎの顔もほんのり染まっているので、彼女もまた気持ちが高まっているものと思われる。
 もっとその声を聴きたいと本能が囁き、清矢郎はその指で髪をかき上げ、耳に触れる。頬に、首に、――唇に、丁寧に長い指をはべらせる。

「ひ、や……っ」
 あさぎは清矢郎の眼を見上げて、妙な声を出した。困ったような、潤んだ眼をしている。
 やはり変態と思われたのか、嫌われる前にやめた方がよいのかと、清矢郎の手が顎で止まる。
 しかし彼が微かに心配そうな色を見せたのを、あさぎは敏感に察したのか、首を小さく横に振ると、その眼をとろりとさせて、やがて閉じた。

 ――どくん、どくん。

 この音は、相手の心音なのか、己の心音なのか。


 気が付いたら、相手に唇を重ねていた。


 柔らかく、小さなそれを優しく啄ばむように。
 一週間しか経っていないが待ちわびていたその感触に、少年は本当はその間に舌を割り入れ、屠りたいと思った。犯したいと思った。

 しかし、それ以上はしてはならないと清矢郎は必死に押し留まる。舌を絡めれば、本能的にそれ以上のことがしたくなるからだ。たとえ外であっても、彼女が月の血を流していたとしても、きっとこの欲求を止められない。

 自分の浅ましさを彼は自覚している。
 本来の十八歳であれば、暴走してもおかしくない。だが彼は常に自戒していた。それが鎖のように強い力で、彼の欲望を締め付ける。
 幼い頃から厳しい父親に抑圧されてきたからか、優しい母親に心配掛けたくないと心に決めたからか。
 まだ性行為自体に慣れていないので、肉欲に任せて十六歳の少女を孕ませてはならないと思う気持ちもある。それでもいつも避妊具を持ち歩いているあたりが、清矢郎自身も矛盾していると思うのだが。

 彼はぐらつきそうな心を自分で叱咤すると、もう一度唇を強く押し付け、柔らかいそれを舌で舐めとると、思い切ってあさぎから顔を離した。

 脳と身体を燃やしながらも彼は薄目を開け、周囲や少女の様子に視線を配っていたが、その間、あさぎは眼をぎゅっと閉じて彼から施される行為を受けていた。
 彼女が眼を開ける前に、何事にも動じないふりをしているあの無表情に戻さねばと、熱いため息を吐きながら少年は思っていた。

 ――ホントウハ、触レタイ。

 もう一人の彼を、押し殺して。

 そしてとろりとした眼を開いたあさぎは、清矢郎の眼をじっと見ると、先程以上にそれを潤ませ、何か言いたげに唇を開こうとした。
 その仕草を見てせり上がる衝動を堪える代わりに――、清矢郎は突如として、あさぎのふわふわの頬を軽くつねったのであった。

 
>>第3話後編へ
>>目次へ

サイトTOPへ
 
スポンサーサイト












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://hekirakunokazamidori.blog106.fc2.com/tb.php/27-d41b153a

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。