碧落の砂時計 もしかしたらの神様。 御礼SS④

碧落の砂時計

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 そこは祇園も悔しいとは思っていなかった。彼とは将来的に財布を共にするだろうし、自分を必要としてくれる会社があるだけで嬉しいと、欲のない彼女は思っていた。そのうえ結婚して子供を産んでも働かせてくれるのならば、後は早海が元気な限りは安月給でも賃金をもらえるだけで嬉しい。これまでのアルバイト生活と、義一との暮らしを思えば、憧れの安定した生活がようやく手に入るのだ。
 そう思うと祇園の結婚願望は、ただの孤独感からだけではないかもしれなかった。そういった温かで安心できる家庭と生活を、中学生の頃からずっと求め続けてきた。だから早海の多少の強引さも嫌だとは思わず、自分も早く結婚して生活の基盤を確かにしたいと思ってしまうのだろう。そして慎ましやかでも、家族が揃った生活を夢見るのは早海もまた一緒のようだった。

「まあな」
 祇園の言葉に早海も納得したらしい。会社が違うのだから彼が出世すれば、先輩後輩もなくなる。ただし二人の性格と年の差が変わらない以上、これからもこんな関係は続いていきそうだが。時に彼を甘えさせ、時に祇園が守られて。
「でも祇園が俺の知らない世界で頑張ってて、どんどん綺麗になってくから、ちょっと気に入らなかったし、だから旅行もどうしても行きたかった。はじまりの場所に戻って、またああやって俺のところに来て欲しかったし、ここに来れば俺のことばっか考えてくれるだろうから」
 ぶすりとした顔で赤裸々に語るのは早海も少しは酔っているからだろうか。祇園は照れてしまったが、嬉しかったので素直に答えた。
「心配しないで。大丈夫だから。旅行、行けて嬉しかったし、別に仕事始めたからって気持ちが変わるわけじゃないし、わ、私だって最近中々会えなくて不安だったんだから」
 実際、早海の方も卒業研究等で忙しく、会えない日が続いていたのだ。
「だからあの日に戻るも何も、もうずっと傍に居るつもりだよ」
 三年前の今夜、始まった関係。あの時のように素直になれたら。少し酔いの効果はあるが、祇園ははにかんでそう答えた。「分かった」と早海が胡坐をかき直しながらそう頷いてくれたので、祇園は安心して追加の冷酒を頼むのであった。

 ・・・・・・・・・・

 酔うのもほどほどに、と早海に言われ、祇園もお金もかかるしな、と満腹になったところで席を立った。
 少しだけ外を散歩する。まだ忙しそうだが旅館の裏手をこっそり覗き、二人で密やかに笑い合う。そこにはもう祇園の幻影はなかった。
 高校生だった早海が祇園に会いに行こうと決めたのは、夕暮れの中で彼女の幻を見たのがきっかけだったと聞いた。もうそんなまやかしに助けられなくてもいいのだ。
 現実を生きていこう。手を伸ばせばそこに居る。そこにある手が、互いを守るから――。祇園は早海としっかりと手を繋いで、海岸沿いの道を歩いた。

 部屋に戻ると室内灯がやけに眩しく感じられ、満月に近いからと明かりを消した。眼が慣れれば相手の顔は十分に見える。
「三年前は、浴衣じゃなかったもんな」
 藍色の闇の中、伸ばした髪をアップにしていた祇園は、白い首筋を唇でなぞられる。思わず小さな声を上げてしまう。
 「色っぽい」と二十二歳の青年に耳元で囁かれれば、いくら付き合いが長くとも子宮から疼いてくる。その手が下りてくると浴衣の帯を解かれ、月明かりの中に白い肌をするりと晒された。
 先ほども抱かれたばかりなのに、拒むつもりは全くない。
 ――来て。
 浴衣を肌蹴させた早海に布団の上に押し倒され、跨られた。三年前とはまた違った状況で、気持ちで、その頃よりも深まった絆で、あの時よりも熱い夜を過ごそう。
 先ほどはできなかった行為まで。乱れた浴衣の上で。互いのあらぬ場所を、大事な部分を一緒に舐め合って。彼は己のそれを祇園に向かって爆発させるのだが、布団が汚れては困ると祇園は必死にそれを飲み込んだ。美味しいとまでは言えないものの、この種を早く腹の中に欲しいなと祇園の胸は熱く燃えていた。
 
 三年前よりも妖艶に絡み合う、若い男女。月の光に照らされて、夜も更けるまで激しく交じり合った。


 次の日の電車の中で、早海と祇園が揃って熟睡していたのは言うまでもない。席がなかったため、二人で並んで座ると寄りかかって、いつの間にかこくりこくりと眠っていた。
 互いの肩に安堵して。互いに凭れ合って。
 トンネルの向こうの二人の未来へと、各駅停車の電車はこととんこととんと、何処までも走っていく――。


   ~END~


>>ご協力いただいたアンケートの投票結果により、こちらの2人の後日談をお送りしました。まだ四ヶ月しか経っていないのに、久しぶりだなあと書いていて楽しかったです。
 いただいたシチュエーションリクエストの全て、「早海×祇園=69(以下略)」「きっと早海のド変態がパワーアップしてそう」「祇園の卒業前夜」「付き合ってから○年目記念日(たぶんあの旅館に早海に会いたくて祇園が追いかけた日からと想像します)」「ノリでブライダルフェアにデートに行く」「早海が嫉妬をやく設定」を生かせるよう、こういった内容にいたしました。
 あれから2年半後と少し時間が経った話になりましたが、連載が終わってまだ4ヶ月だからか少しだけ成長した?2人が書けて新鮮な感じがしました。
 リクくださった方々のお好みに合うかは分かりませんが、いつも応援くださる方のお礼になればと思います。もちろんのこと、リクいただいた他のお話の続編SSもいつか必ず書かせていただきますね。今回は書く時間がなくてすみませんでした。

 それではお読みいただき、ありがとうございました!(面白かったよーということでしたら、拍手のほうぽちりとお願いしますっ↓)

 追記:余談ですがこの夜、はやみは一体何度……という;(書き終わってから気付いた;)


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2009.06.22 08:07 | 更新報告・制作情報 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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