碧落の砂時計 青竹迷風―第5話 罪(中編)―

碧落の砂時計

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 どうしてそのような恐ろしいことが思い浮かんだのか、清矢郎にも分からない。だがその一瞬、ぞくりとするほど興奮し、そしてそんな自分の闇に少年はぞっとした。
 そしてそのことは二度と考えまいと、彼は誰にも言えないその秘密を、心の中で懸命に封印したのであった。

 そうしたあさぎや自分の身体の成長への戸惑い以外にも、彼には苛立ちがあった。
 ひとつは厳しい父親への反抗心。ふたつめは自分は対象ではなくよい友達にも恵まれたが、苛めや妬みが横行する、思春期の複雑な人間関係へのストレス。

 中学生となれば自我が強くなる。――俺は此処までやってるんだ、これだけのことが出来るんだ。お前の支配は受けたくない!と父親の言うことが正しくとも、より高みを目指すべきだと分かっていても、自分を否定されたようで――それは彼自身が己を否定していたに過ぎないのだが、同性の親に嫌悪感を抱いていた。

 それは結局年齢と共に自然と収まっていくのであるが、その頃が最も強くそう思っていた時期であった。

 そんな抑圧の中、確かに自分で自分を絶頂に導く時は、頭が真っ白になり身体が痺れ、その瞬間だけは嫌なことを全部忘れられた。
 ある意味、現実逃避のように、彼はその行為をしていた。一日のうちで、唯一得られる「快楽」の時。終わった後に虚しさと自己嫌悪は伴うものの、その魔力は強く少年を誘惑し、「溜まるものは仕方ない」と開き直りながら同世代の少年と同様、それを繰り返していた。

 そして彼の「その対象」が、男子よりも発達が早く、目上のようにたしなめてくるクラスの女子に向かうことは、何故かなかったのである。彼はどちらかといえばそういった女子を苦手としていた。
 逆に年に数回しか会えない従妹の「彼女」の方が、嫌な面が見えないからか、また家族だからか、年の差もさほど感じず純粋に可愛いと思えるほどであった。

 勿論家族だからこそ色々な生活習慣は見えているし、これが恋愛感情であるとは彼も思っていないが、この子となら明日も一緒に居たいな、学校ではどんな様子なのかな、という気持ちにもさせられていた。

 ――その仄かな思慕が、いつ狂ったのか。


『加納と村岡が、井川を苛めている』

 そんな疑惑で清矢郎が同じ部活の友人と教師に呼び出されたのは、中学二年の夏であった。
 苛められた少年は、同じ剣道部の同級生――無論、清矢郎や友人はそんなことはしていない。寧ろ、その少年を苛めていた相手が三年生の先輩であることも彼らは知っている。

『井川が、お前らにされたと言ったんだが』

 教師は困ったようにそう言った。
 清矢郎には合点がいった。顧問が決めたことだが、この夏の団体戦は引退間際の三年生を差し置いて、自分や友人が出場することとなった。それを妬んだ三年生が苛めていた少年にそう言わせたのだろうと、彼らの自分達を見ていた視線から納得した。

 教師が彼らに真偽を確かめようとしてくれたのは有り難かったが、疑われたことや妬まれたこと、陥れられたことは、流石に悔しい。
 幸いにも他の二年生もことの真偽は知っており、自己主張も激しくなく真面目に部活に取り組み、能力的にも文句のない彼らを信用していたので、苛めの対象が彼らに移ることはなかった。

 しかし苛められていた少年の母親が清矢郎の家まで来てしまい、父親にもそれは伝わり、双方の家族から問い詰められる。

 父親は勿論、清矢郎を信じた。しかし、そうなってしまったのはそもそもそうした苛めが発生していたのに、見て見ぬふりをしていたお前が悪いと、結局鉄拳を食らう羽目になる。

 
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