碧落の砂時計 青竹迷風―第6話 葛藤(前編)―

碧落の砂時計

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※R15の性描写がある回です。

 ここで場面は再び花火の夜の真っ暗な駐車場へと戻る――。

 若い男女の行為はエスカレートしていた。
「……く、うっ……!」
 唇を噛んで必死に堪えるとあさぎは息だけをどうにか吐き出して、びくんびくんと身体を震わせる。
 「これ」を見るのは清矢郎にとってまだ二度目であるが、「達した」ということなのだろうか。

 指をずるりと更に奥に差し入れる。
 ――これが、……であったなら、と思う。
 様々な思いが駆け巡り、清矢郎は眼鏡の奥の目をぎゅっと閉じると、空いた方の腕で後ろから熱いあさぎの身体を抱き締めた。

 思うことは、ただひとつ。
 本能の赴くこと。
 痛いほどに。

 そして暫く痙攣していたあさぎは、やがて大きなため息をつくと、くたりと身体の力を抜いて清矢郎に凭れてきた。
 やはり「そう」だったのかと理解し、果たしていない己の欲望に変わりはないが、安堵と達成感は生じる。清矢郎は長らく動かしていた手を、少女の下着から抜いた。

「ご、ごめん……」
 あさぎが俯いて謝る。
「何が」
 荒い息を整えつつそう言うと、濡れて独特の匂いのする指を眺め、それを舐めとるのも下品かと思い、ジーンズで乱雑に拭き取る。
「わ、私だけ……」
 あさぎは恥ずかしそうにそう言うと、それ以上は言葉を紡がず、清矢郎の方を振り向いた。
「別に、あさぎがよかったんなら、それでいい」
 少々恥ずかしい台詞だが、嘘はないので彼はそう伝えた。逆にそれであさぎがこうした姿を見せなくなることの方が、彼は嫌だと思っている。

 周囲に既に「経験」をし、更にそれを人に話すような男は少ないが、稀にイカせてやっただの、彼女がそうならないがどうすればいいだのという話を聞く。
 なので清矢郎は、腕の中の少女が素直に「それ」に身を任せてくれることに、ほっとしていた。それは、自分を信じていてくれるようにも思えたからだ。

 彼は性格上、謙虚なので経験の浅い自分の腕がよいなどとは思っていない。そしてあさぎが家でこっそりと自分を高めているので、「好い場所」を知っているということも知らない。――たとえ知ったとしても軽蔑などしないが。
 だから彼女は心だけでなく、身体も「感じやすい」子なのだろうと彼は解釈した。それは嬉しく思っており、周囲が悩んでいることを思えば自分は運のいい方であるとも思っている。

 ――まさか、従兄妹同士だから「そういう相性」もいい、というオチじゃないだろうな、と少々ぞっとする仮定も胸を過ぎったが……。

 ともあれ、あさぎが己に触れられることを嫌がらず、感じて悦んでくれるのは、彼にとって嬉しいことなのだ。
 肉欲は尽きないが、精神的にはそれだけでも満たされないことはない。さてこの後はどうするべきかと、清矢郎はどうにか己を落ち着かせながら考える。

 もしこんな場所で身体を重ねて、誰かが来たらどうすればよいか。
 それに再び彼女を汚し、そ知らぬ顔で嘘をつき、彼女の家族の元へ帰すことへの罪悪感もある。

 それでもその理性とは真逆に、浅ましくも身体の望むことはひとつであり――。

「……ど、どうする?」
 尋ねてきたのはあさぎの方からであった。何のことかと聞くのは無粋だろう。
「あさぎは、どうしてえんだよ」
 清矢郎はあえてゆっくりと低く、冷静を装った声で尋ねる。逆にその声色が少女を怯えさせてしまったのか、あさぎはぴくりと身体を震わせると、恐る恐るといった様子で彼を見上げてきた。

「そ、外だし、なんか、こわい……けど、私だけだと悪いし、せ、せいちゃんだって……」
……したいだろうし、と小さな小さな声で少女は呟いた。

 あからさまに言われ、それは間違っていないが、清矢郎は何処か気恥ずかしい思いも抱く。しかし身体は情けないほど正直に主張している。

 それでも彼は、あさぎのことを大切にしたいと思っていた。
 ただの勢いで従妹を抱いたんだろう、などと後ろ指を差されたくはないと。

「気乗りしねえなら、やめとこうぜ」
 触れているとどうしても欲求に負けそうになるので、彼女の身体から手を離すと後ろに両手をつき、膝の上で自分を見ている少女から身を引いた姿勢で、清矢郎は微かに苦笑した。
「――」
 そんな彼の作り笑いのような表情を、月明かりの中じっと見ていたあさぎは、
「じ、時間になったら帰らなきゃだけど……」
もごもごとそう言うと、意を決したように清矢郎に近づくと彼のベルトに手を掛けた。

「……わ、私が、……して、あげよう、か……?」

 言った瞬間、彼女は恥ずかしそうに俯いた。

 再び清矢郎の眼が点になる。

 金魚が見えると言うほどのこの子は、いつだって予測不能なことを言ってくれるもんだな、と思った。その申し出に決して嫌な気分はしないものの、正直驚いた。

 それでも「それ」すらも、何度も夢想していたことなのだ。汚い本性では。夜のひとりきりの、己の部屋の中で。何度も、何度も。

 ――だから心の中では、ざわり、と黒い欲望が、彼女に「それ」を突きつけ汚すことを、期待してしまっていた。


 ・・・・・・・・・・


 そしてまた場面は、四年前に戻り――。

 
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