碧落の砂時計 青竹迷風―第6話 葛藤(後編)―

碧落の砂時計

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※R15の性描写がある回です。

 そして更に二年が経ち、あさぎも高校生になった。清矢郎が偶然駅で見かけた時には、彼女は友達らしき少女と笑い合っていた。

 それを見て彼は安堵する。
 ――心に傷は残っているだろうが、彼女は健気に生きている。自分が居ない場所では、明るく笑っていてくれる。

 こんな自分なんか、どうなってもいい。二度と口も利いてもらえないと分かっている。
 しかし勝手と言われようとも、あんなことをしてしまった彼女には、誰よりも幸せになって欲しかった。

 あんな哀しい思い出は忘れて、幸せに――。

 ……それは綺麗ごとであった。

 その「幸せ」の定義は漠然としたものであった。いつか他の男とあさぎが「あの続き」をすること、それも彼女の幸せに入っているのだろうが、その行為自体を、彼はあえて想像しないでいる。
 それが本心では寂しくとも、ただの都合のよい幻想であろうとも、それでも彼女がもう二度とあんな絶望に打ちひしがれた表情をすることないよう、笑っていて欲しいと本気で思っていた。
 あの裏切りにあたる酷い行為は、やはり忘れて欲しいのだ。

 ――それなのに、少年は「彼女」を思い出していた。
 「あの日」に未だ、縛られていた。

 また駅で姿を見ることはないかと、彼はあさぎを無意識のうちに探している。
 それは幸せであるか確認したいからか。それともただ、彼女に会いたいからか――?

 こんなどうしようもない最低な自分など、もう何も望んではいけないと彼は思っているのに、それでも浅ましく彼女を望むというのか。

 最早彼は自分でも自分が何を考えているのか、どうしてよいか分からないでいる。
 この苦しい想いが、いつか葬られることはあるのだろうか。逆に囚われたままあることが罰であり、罪の償いなのだろうか。
 大学に入り、大人になり、あさぎとも会わなくなり、それぞれに結婚でもすれば、自然と風化されていくだろうか――。


 そのようなことを思っていた矢先、運命の歯車は回り出す。
 同じように彼を気にしていた彼よりも強い少女は、遂に一歩を踏み出し、「あの日」に決着をつけるため、動き出したのであった。

 あの日の哀しい現実と気丈にも向き合い、そして弱い彼の心に触れる。
 金魚を見るようになってしまったという事実のナイフで切り裂いて。その独特の不思議な感覚で、少年を惑わせる。

 そして、彼を贖罪と性の誘惑のまやかしに包む。

 ――それでも、いいと彼は思った。

 彼女が幸せならば。自分が罪を償い、自分に彼女を守る権利を与えられるならば。

 何もいらない。もう、何も考えない。
 それに、自分の全てを賭けるまでであった――。


 ・・・・・・・・・・


 そして再び、花火の夜の誰も居ない駐車場で……。

 清矢郎は熱い息を吐き出した。自分の股間の上に伏せている少女の黒髪を思わず掴む。

 「決壊」するまであと一歩。

 罪悪感をどれほど抱いていても、罪を償うと言っても、今現在こんなことをしてしまっていれば、何にもならない。
 まだ十六歳の少女相手に罪を重ねているだけであり、重ねれば重ねるほど罪の意識すらもあやふやになってくる。

 それでも彼女から与えられた快楽に理性が崩壊し、欲望が限界まで募ってしまった今は、やはり何も考えられず、この少女に向けて放出したかった――彼女が、許してくれるならば。

 他の誰に、許されなくとも。

 自分は彼女に、何が出来るのか。この小さな身体に、昔からいつも受け止めさせてばかりではないか。

 それでも――。

 清矢郎の頭の中が真っ白になった。

 堪えていた声が、微かに唇の端から、甘く低く、零れる。
 息を、止める。


 ――吐き出す。


 気が付けば罪深いそれが健気な少女の口に全て収まり、それでも吐き出したりずに未だ放出を続け、その小さな唇の端からはみ出さんとしていた――。


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