碧落の砂時計 青竹迷風―第7話 決意(中編)―

碧落の砂時計

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「せーしろーは……」

 清矢郎があさぎの肩を掴みそのまま顔を覗き込んでいると、彼女は口を開いた。また馬鹿だの生真面目だの言われるかな、と覚悟を決めていた彼であったが、

「わ、私のこと――……す、すき?」

恐る恐ると言った感じであるが彼の眼を見てそんなことを問い掛けられ、自然な流れではあろうが、予測していなかった質問に清矢郎は絶句した。

 しかしあさぎは、非常に不安そうな眼をしている。彼はこの眼に弱かった。
 恥ずかしさから答えたくないと思った清矢郎は誤魔化そうかともしたが、流石にそれは彼女を巻き込んでおいて卑怯だとも思い直す。よって、非常に言いづらかったが眼を逸らして――、「ん、」と頷いてみた。

「うん、だけじゃ分かんない!」

 するとあさぎはそう言って、怒ったように清矢郎のTシャツを引っ張ると再び彼を引き寄せる。

 二人の顔が、急に近づいた。

 せめてさっきの行為のような興奮している時に聞いてくれ!と彼は心底思ったが、あさぎの眼は見透かすように彼の方をじっと見ている。

 それに少年は、今決めたばかりなのだ。たったひとつ、この気持ちだけは彼女が自分をどのように想おうとも、ゆるぎないものであると自信を持っていたい、と。
 それが彼女へこれから捧げることの出来る、今度こそ恥じない「誠実」なのだと。
 この先、どんな苦労があっても。あさぎがこの気持ちを迷惑に思わない限りは。

 照れ臭くても、あさぎ以外誰も見ていないのだと清矢郎は開き直る。――ただ眼の前の女の子を安心させる為に。自分も「それ」を声にすることで、言葉に命を持たせ、もう引き返せないように覚悟を決める為に。
 彼は自分にそう言い聞かせると、無意識のうちに彼女の方に頭を傾け、額をこつんと当てた。そのまま自然に、唇を軽く重ねる。
 べたつくその唇は、初めて口に触れる自分のものだと思うと妙な感じはしたものの、それを離しながら、彼は生まれて初めての言葉を口に出した。


「好き、だ」、と。


「……」

 すると尋ねた方のあさぎが驚いたように、まじまじと清矢郎を見る。それから、ふにゃりと相好を崩した。
「はじめて、きいた」
 嬉しそうに、そう笑ったのが吐き出した息の様子で分かった。

「……帰るぞ」
 暗闇でよかったと彼は心から思う。清矢郎はそう言うとあさぎを膝から下ろし、立ち上がって背を向けると、今の自分のおかしな表情を見せないようにした。
 もう二度と言いたくねえ、と思いながらも、この質問のおかげでまだ欲望は昇華されていないものの、この場からすぐさま去りたいようなきっかけを作ることが出来た。

 それにやはりはっきりと口に出したことで、自分は思っていた以上に彼女を好ましく思っており、だからこそどうにか傍に居られる方法を考えて、あさぎも望んでくれるならば、それを遠い未来まで実現させたい――という決意が確かになるのを、ずんずんと歩きながら清矢郎は胸の中で実感していた。

 しばらく歩くと「待ってよう」とあさぎが彼に追いつき、照れも少しは収まってくる。再び門を二人で乗り越える。
 勢いであんなことをしたものの、誰にも見つからなかった運の良さに今更ながらほっとしながら、二人は非現実の空間に別れを告げ、再び自分達が生きる日常へと手を繋いで戻っていったのであった。

 そしてそんな覚悟を胸に秘めると、清矢郎はあさぎと同じ電車に乗り、駅まで母親が迎えに来ると言う彼女を、何事も無かったかのように最寄り駅まで送り届けていった――。


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