碧落の砂時計 青竹迷風―第8話 忍ぶ恋(前編)―

碧落の砂時計

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 結局困った清矢郎は、「ウチに来る?」という提案をしてしまい、夏休みはまだ続いていたのでその数日後、再びあさぎを彼の家に招き入れたのであった。
 その前日からどぎまぎしていたものだが、最初に彼女をこの部屋で抱いたことをどうしても思い出してしまう。自分の部屋の真ん中で飲み物を飲むあさぎから、少年は思わず眼を逸らした。

 両親は相変わらず仕事で忙しいので家に来ること自体は問題ないが、彼女を家に連れてこなかったのはまた「そう」なってしまうことを恐れていたからと、近所の住人に女を連れ込んでいると噂を立てられてもいけないからである。
 と言って他に気のきいた場所も思いつかず、とりあえず家に連れてきてしまったという次第なのであった。

 しかしこうして二人で腰を落ち着けて話をしたところで、夏休みの終わりに一度少し遠いところまで遊びに行こう、ということで話はまとまった。
 会いたいと要求しながらも、あさぎは清矢郎が受験生なのでわがままを言ってはいけないとも思っている。それに彼女もあまり遊び歩いていると今までの素行上、親に怪しまれたり心配される恐れもあるらしい。

「だから会えないのは仕方ないし、別にいいんだけどさ……」
 それでもあさぎはまだ不満があるのか、短いスカートから出ている健康的な素足を絨毯の上に投げ出しながら、少し頬を膨らませてぶつぶつと言っている。
 清矢郎と言えば彼女との距離をどうとってよいか分からず、自分の勉強机の椅子に座り頬杖をつき、少し離れた位置から彼女を見下ろしていた。

「でも、私からばっか会いたいって言ってる気がするもん。――せいちゃんは、会いたくないの?」
 私に、と言うとあさぎは清矢郎を真っ直ぐに見上げた。最初にこの眼で自分を抱けと言ったのも、少女の方からであったことを彼は思い出す。

 この子は結局自分の想いにとても素直な子なのだろうと、幼い時の姿を重ねても思う。悪い意味ではなく我が侭に、自己をその感覚のままに表現しているのだろう。
 それは彼には絶対に有り得ない姿で、だからこそ彼女に惹かれるのだが、逆に先日の「好きかどうか」の問いのように、こうストレートに尋ねられると困ってしまう。

「それに、なんか微妙に距離あるし……」
 それはあさぎが部屋の中央のベッドに凭れ、清矢郎は勉強机の椅子に座って、というこの状態のことを指しているようだ。彼女は膝を折ると、いじけたように裸足の指先を触る。
 ずれたスカートの裾から白い太股が姿を現した。清矢郎は再び困ったように頭を掻く。

 ――って、「したい」のか? 触って欲しいのか?

 そんな直接的で単純な疑問が思い浮かんでしまうが、彼も照れから聞くことがためらわれる。
 あさぎのことを性欲が強いなどと嘲る気は、清矢郎にはない。こんな自分の傍に寄り添いたいと思ってくれるなんて、嬉しいことだと思うほどだ。
 彼とて、決して彼女の横に座りたくないわけではないのだ。欲望はくだらないと思いながらも常にひとつきりなのだが、それに従ってよいものかどうか、ずっと悩んでいるのであった。

 文句のありそうなあさぎをどうなだめればよいか。口下手な清矢郎は悩んだ末に、ため息混じりに呟いた。
「……これでも、我慢、してんだけどな……」
 それもあからさまな答えだな、と言った後に彼は思った。裏を返せば、自分が「そういうことをしたい」と考えていると素直に言っているようなものである。

 あさぎに文句を言われようとも、彼としては彼女のことを第一に考えた上で必死に耐えているところもあるので、分かってもらいたいと思う部分もあった。
 彼女には負い目から全面降伏しているものの、付き合っているという立場と少しの慣れから、そんな考えにもなってきたのかもしれない。

 どちらにせよ、今、この状況に自分がどう動くべきか彼が悩んでいる事には変わらない。
 何が正しいのか、何を優先すればよいのか、分からない。


 ――もういっそ、会うのをやめるか?

 まだ子供で、周囲には許されない仲なのだから。


 そんな考えも清矢郎にはふと浮かぶが、間違いなくあさぎは泣くだろう。彼も苦しくなり、あの四年間の比ではないだろう。
 彼は彼女を求めているし、それを受け入れられた。その幸せを維持したいからこそ、今二人はこのように悩んでいるのだから。


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