碧落の砂時計 夢に迷う青い竹~幻影金魚シリーズ御礼SS~

碧落の砂時計

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※ネタバレを含みますので、本編を最後まで読まれていない方はご注意ください。


 さて、あれからめでたく就職した清矢郎は、一人暮らしを始めることにした。職場は大学と同じ市内にあるので、実家から通えない距離ではない。普通は仕事を始めてからの方が家事の時間が取れないため、家族の助けが欲しくなりそうなものだが、彼も将来を考えて一度は親元を離れることにしたようだ。そうは言っても今までも共働きの両親に代わって三人分の家事をこなしてきた清矢郎、初めての一人暮らしと言っても戸惑うことはほとんどなかった。
 三部屋もあるようなアパートでぽつんと食事をするわけだが、これも両親が不在の折に食事をしていたことが多かったので気にならない……が、新人社員が一人暮らしをするには広すぎないか、現に物がほとんど置いていない部屋があるのに、という疑問は野暮である。

 平日の夕方、インターホンを押す音に、いつもより早く帰宅できた清矢郎の耳が敏感に反応する。
「おじゃましまーす」
 彼がドアを開けると、そこには幼い頃から見知っている従妹の姿。いつもは一人で居る部屋に、綺麗な声が届いた。
 そう。この彼女が清矢郎の許嫁――と言っていいのか、親戚でもある互いの両親に結婚を前提に付き合いたいと宣言した相手・あさぎ。彼女は時々清矢郎のアパートを訪れているのだった。

 清矢郎が広いアパートを借りたと知った時、周囲は不思議そうな顔をした。当のあさぎも分かっていない。けれども清矢郎の母親だけは意味ありげに、「そうよねえ、部屋数が必要だものねえ」と笑っていたので、どうやら息子の魂胆に勘付いていたらしい。
 清矢郎はいつもの無表情のまま、あさぎが遊びに来たり、あわよくば泊まってくれるだけでなく、近い将来一緒に暮らすことになれば寝室と居間を分けて……いや子供が生まれれば……などと結婚生活まで及ぶ果てしない妄想を一人繰り広げていたわけだが、あさぎはそれを知ることなく「へー。広くていいねえ。私も一人暮らししたいなあ」などと言って可愛く笑っている。

 だが清矢郎にとって一人暮らしの楽しみはそれだけではない。あさぎはこの家に来るといつも、「せいちゃん、働いていて大変なんだからっ」と張り切って家事をしてくれるのだ。
 来た日には手料理を振る舞ったり、おかずの作り置きをしたりなどしてくれる。彼女もまた清矢郎の味の好みを事前に知りたい、結婚してから自分の料理にがっかりされたくないと言った目的があるわけだが、この状況に浮かれている清矢郎は全く不快に感じていない。寧ろあさぎと同様、結婚前の共同生活の練習として必要だと考えているほどだ。
 休日だけでなく今日のように仕事が早く終わった日にあさぎが来てくれ、台所に立っている姿を見ればもう、無表情の下で清矢郎も子供のようにわくわくと胸を躍らせる。まるで新婚みたいだな、と呑気なことを考えている。この青竹にもそういう単純な一面はあるのだった。
 きゃあと悲鳴を上げながらも、あさぎは必死に料理をしている。あさぎも実家住まいであり、看護師である清矢郎の母親よりも彼女の母親の方が家に居ただろうから、もしかしたら清矢郎の方が多く台所に立った経験があるかもしれない。年齢の差もある。
 それでも、あさぎの料理の味が清矢郎は好きだった。大学時代、一緒に遊びに行った時にも彼女は弁当を作ってきてくれたが、それも美味かった。料理の本の盛り付けと比べれば、そこまでには至らないもののあさぎが気にするほど汚い、美味しくないとは思わない。
 元々好き嫌いがなくとも、それ以上に「自分のために」という幸福のスパイスで、益々恋人の手料理が美味しく感じるというのは清矢郎も例に漏れないようだった。

 あさぎの真新しいエプロン姿を眺めていると後ろから抱き締めたくなってくるが、怪我をさせてはいけないので我慢する――が、清矢郎も通り過ぎざまに、わざと「大丈夫か?」などと顔を寄せて声を掛けてしまう。すると、
「大丈夫だからっ。恥ずかしいから、あっち行ってー!」
 そう怒ってあさぎが顔を赤らめるので、隣の部屋に行かなければならないのは残念だが、初々しい彼女が見たくてまたからかってしまう清矢郎であった(当然、あさぎからすれば読めない無表情で)。

 さて「ごちそうさま」の後、ゆっくりできる夜は二度目の「いただきます」の時間が始まる。朝まで一緒に居られる日に清矢郎が先に出勤すれば(合鍵は渡しているので)、それこそ完全な新婚さんごっこである。実際、結婚前の予行練習だと二人共こっそり思っているが。
 更に「予行練習」は家事だけでない。風呂も一緒に入れば、好きな部屋で好きなように性行為ができるのもまた愉しいものだ。どれだけ肌を重ねても今の状況ではあさぎがすぐに帰ってしまい、清矢郎の中に一層寂しさが残るので、本当に結婚した後もその分の安堵感が、子供でも生まれればまた別の幸せが加味され、飽きるということは決してないだろう。
 ただし仮夫婦生活を営むにあたって、声だけはラブホテルのようにはいかない。高級マンションではないので、一応隣人に気を遣っている。だが他の部屋からの物音があまり聞こえないので、ある程度は大丈夫なのかもしれない。それにあさぎはよく声を出してくれるので、甘いさえずりが聞こえなくなるのも清矢郎にとっては残念なことだ。優しいあさぎは周辺住人のことを気にしてくれているが、困る彼女も可愛くてわざと声が出るような激しい攻めになってしまうこともある。……それは時々反省しているが。

 だが行為の最中は、興奮でそこまで考えられないもの。正常位で交わった後にあさぎを畳の上に四つん這いにさせて後ろから犯せば、彼女の背中にイグサで赤く擦れた痕が見られた。まるで金魚のような。痛々しくて可愛そうだが、妙に嗜虐心がそそられる。
「ああんっ! せいちゃん――」
 交わったままべろりと背中を舐め上げれば、きゅんと狭い膣内が締まるのがたまらない。興奮するのはあさぎも同じだろうか。今夜も最奥まで突けば、気持ちよさそうに高らかに叫ぶのであった。


 ……幻にたゆたうための水槽は割れたが、現実世界に生きる二人の住処が此処にはあった。幻影の金魚が消えた後に残ったのは、そんなちっぽけことがただ永続することを望む、二人で生きる日々だった。
 
 
   ~END~
 
>>リクエストにより、その後のほのぼの日常編、いってみましたー。番外編なので。本編とうってかわって明るい感じも書いてみたくなるものです。それにしても清矢郎の妄想っぷりが…(苦笑&汗)彼のこと好きになってくださった方々にも引かれそうなほど;

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2009.07.31 01:45 | 更新報告・制作情報 | トラックバック(-) | コメント(-) |
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